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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■どこから手を付けるべきか(その4)
発達障害のことに首をつっこむようになって1年半が過ぎました。まだまだこの分野では駆け出しです。というかそもそも素人だし。(でも、素人だという言い訳はいつまでも通用するものじゃありません)。

発達障害の種類・重複概念

発達障害の種類・重複概念
http://www.ieji.org/dilemma/2011/10/post-359.html

AAのミーティングは、話をしてくれる他者の体験と、話を聞いている自分の体験を重ね合わせることが、ひとつの技法になっています。
単純な例を挙げれば、誰かが酒で家族に迷惑をかけた話をするのを聞けば、自分も以前家族に酒で迷惑をかけた経験が思い出され、その話をすると、次の人も似たような話をする・・、そうやって「どんなに家族に迷惑をかけても、酒を断てなかった自分」という共感がミーティング会場を覆っていきます。自分とまったく同じ体験をした人はいませんが、似たような体験を持った人は必ずいるものです。

AAに限らず、ピア・サポート・グループと呼ばれるピア(同じ立場の人)が集まるところでは同じ事でしょう。だから、禁酒セラピーの本の話などしちゃいかんわけです。

ところがこの共感を持って体験を重ね合わせることが苦手な人がいます。みんながどんな話をしていようが、お構いなしに自分のしたい話をしてしまいます。もしミーティングがこういう人ばかりになってしまったら、順番にてんでんばらばらの話をするだけで終わってしまい、経験と力と希望の「分かち合い」になりません。

こういう人はAAでどんな評価を受けるでしょう。「正直になれない」「自分が振り返られない」「自省ができない」。専門の医療機関にかかってもらえば、おそらく広汎性発達障害(PDD)のどれかの診断が出てくるでしょう。PDDの人は、人の気持ちを察するのが苦手なので、人の話を聞くことで過去を再体験することもやっぱり苦手です。

彼らは「圧倒的に現在に生きて」いるために、過去における感情を思い起こすことも苦手です。その割には被害体験はばっちり記憶していて、恨みの感情もきちんと存在します。ところが受けた恩義は忘れてしまっているために、恩知らずと見なされてしまったりします。

これはひとつの例に過ぎず、広汎性というだけあって、現れ方はおそらく様々です。

定型発達者であれば様々なAAミーティングに多数出席することが有効ですが、広汎性の人はそうとは限りません。むしろ、地元のミーティングに定期的に出席を続けるルーティンを守ったほうが確実です。12ステップは長年積み重ねた被害的認知を取り除くには有効でしょうが、器質の問題を解決できるわけではありません。感じられないものを「感じるようになれ」と言っても無理なことなので、グランディンの言う、テレビの外国語講座の場面を丸憶えするように、対人関係のこの場面ではこう受け答えする、という社会的スキルを学習する手助けをすることが有効でしょう。(その上で、受け答えに心がこもっていないとか非難するのは定型者のわがままだと思う)。

発達障害とアディクションの関係については、まだよく分からないこともたくさんあります。もとより、成人の発達障害が社会的に取り上げられるようになったのは、ここ数年のことに過ぎません。もちろん見えてきたこともあります。

広汎性発達障害(自閉圏)の人は「こだわり」を持ちます。ある一つの物事に興味や関心が集中してしまうことです。その「こだわり」が飲酒に向いて酒ばかり飲んでいたら、それは依存症と見なされてしまうかも知れません。AAの中でも、どうもこの人の飲酒体験はアディクションの渇望じゃなくて、自閉のこだわりなのじゃないか、と思わせる話を聞くこともがあります。その場合は、ミーティングやステップという枠組み自体がその人の問題と合致していないことになります。


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10月18日(火)
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