ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
[964208hit]
■ACのステップについて(その1)
福岡の「12ステップを学ぶ集い」でファシリテーターをやらせてもらいました。
ACの人たちの関心が高く、ひょっとすると参加者の半分以上はACのグループの人たちだったかもしれません。ACODAの本を持ってきている人も、水色の表紙の12ステップ本を使う日本のACAの方もいらしてました。また、ビッグ・レッド・ブックを使っているACAのグループの人もいましたし、はたまた回復研(つまりジョーのステップ)のプログラムをやっている人もいました。
少々意外に感じたのは、「同じ12ステップであっても、アルコホーリク本人とACのやるステップは違うのではないか?」という前提で考えている人が多かったことです。同じ12ステップなのに「違うこと」をやらねばならない・・というのは誤解です(もちろん)。
ただもちろん、違いもあります。AAのステップ1はアルコールに対する無力を認めるステップです。そのために、シルクワース博士による「身体のアレルギー(渇望)」と「精神的とらわれ(強迫観念)」の概念を長々説明せねばなりません。この身体と精神のふたつの病気の概念は、アルコール以外にも薬物やギャンブルなどのアディクションにはうまく当てはまります。しかし、家族(ACを含む)の人の問題を説明するためにはあまり役に立ちません。
ステップ1は「問題」を知るステップだと言います。自分が何かの問題を抱えていることを知った人は、できればその問題を解決したいと願うものであり、それがステップに取り組む意欲を生みます。アルコホーリクの場合には、「このままではまた酒を飲んでしまうし、飲み出したらやがて自分は破滅だ」ということが問題です。
しかしステップを先に進むと、この「問題」は実は表面的なことに過ぎないことが分かってきます。
「私たちにとって飲むことは問題の一つの症候にすぎなかった」(p.92)
正常で正気の人間が、破滅へ向かう酒をまた飲み始めるわけがありません。アルコホーリクは飲んでいないときも問題を抱えており、それが「最初の一杯」を飲む狂気を呼び起こします。つまり飲酒は表面的な問題に過ぎず、内部には本質的な問題を抱えているのです。それは酒を飲んでいるときだけでなく、やめているときも存在しています。「では本質的な問題とは何か?」をつまびらかにするのがステップ3です。そこで私たちは、自分が「何もかも取り仕切りたがる役者」であることを知ります。
そして、この本質的な問題はアディクト本人・家族、もちろんACにも共通している問題です。
ACにとっても表面的な問題というのは存在します。もともとアダルト・チルドレンという概念は1970年代にアメリカのアルコホーリクの子供たちの観察によって生まれました。ACA(Adult Children of Alcoholics)の創始者となった Tonny A. は、ACの特徴を14の項目にまとめています。
洗濯物リスト アダルトチャイルドの14の特徴
http://www4.hp-ez.com/hp/acafukuoka/page4/bid-83311
洗濯物リストってのはチェックリストという意味ね。この13番目と14番目にパラ・アルコホリックという言葉が出てきます。日本語に訳すなら疑似アルコホリックでしょうか。AC自身が酒を飲む人でなくても、アルコホーリクの家庭で育った影響を受けて、アルコホーリクと同じ性質を抱えることになってしまった・・・というのがACの問題です。
酒をやめただけで回復していないアルコホーリクは「困ったちゃん」であり、周囲の人間にとっては頭痛のタネです。同じようにACも(いったんアル中になって酒をやめるという過程は経ていないものの)酒をやめただけで回復していないアル中と同じで、困ったちゃんであり、周囲にとって頭痛のタネなのです。
ACの概念が広がって行くにつれ、アルコホーリックの成人した子供(ACoA)に限らず、親が依存症でない人の中にも同じ傾向を抱えている人が少なからずいることが分かってきました。そんな彼らは「機能不全家族で育って成人した子供たち(ACoD)」と呼ばれ、ACoAと同じくACと呼ばれるようになりました。
[5]続きを読む
08月17日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る