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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■自尊感情・自己評価について(その2)
自己評価が低いことは辛いことです。そこで私たちは手っ取り早く楽になろうと、酒や薬に頼ったり、ギャンブルやセックスにふけったり、他者を支配しコントロールすることに熱心になりました。なぜならそれは私たちに一時的な万能感を与えてくれ、自信を与えてくれ、自己評価が高まった「つもりになれた」からです。
依存対象を断つということは、そうした解決手段を失うことでもあります。そのままでは、再発しやすいし、別のジャンルの依存症に移行しやすいままです。
では、どうやったら自己評価を高めることができるのか。
ここまで自己評価という言葉を使ってきました。それは self-esteem に対してビッグブックの新訳が「自己評価」という訳語をあてているからです。しかし、評価という言葉は evaluate (価値を見極める)という意味と取り違えやすいので、ここからは「自尊感情」という言葉を使うことにします。
この図は、リンク集に載せている共依存おやじさんのブログの記事に掲載されていたものです。
元記事はこちら。
http://ranran-panda.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-02c1.html
自尊感情(自己評価)というのは、実は二階建てになっていると考えられます。(この考え方は心理学者の近藤卓という人のものだと思います)。
一階部分が「基本的自尊感情」(basic self-esteem)です。これは「自分には価値がある」とか「このままの自分でいい」とか「自分は大切な存在だ」という感情です。
二階部分が「社会的自尊感情」(social self-esteem)です。これは「自分にもできることがある」とか「人より優れている」という感情です。
二階部分は、人に褒められたり認められたりすることによって成長します。良い学校を出たとか、良い仕事をしているとか、有名であるとか、知り合いがたくさんいるとか・・これらは二階部分を膨らませてくれます。成功とか他者からのプラスの評価によって高まる部分です。
上の図では、一階部分をビールに、二階部分をビールの泡に例えています。(アル中相手の話でビールを例に使うのは好ましくないとすれば、一階部分がゴンドラ、二階部分が気球の例えもあります)。自尊感情の高い低いは人によって違いますが、それはビールの泡の表面の高さです。表面の高さが同じでも、中身はほとんどビールの人もいれば、泡ばっかりの人もおり、ビールと泡が半々という人もいるでしょう。
ところで、二階部分(ビールの泡の部分)は、失敗や挫折によって失われやすいものです。泡が吹き飛んでみたらビールが底のほうにちょっとあるだけだった・・というアル中さんも少なくありません。真面目な子供時代を過ごした人たちです。努力によって、他者から分かりやすいプラスの評価を獲得してきた人たちです。しかし、アルコールによる挫折によって社会的立場を失ってしまうと、もう一度努力して再獲得する気力が生まれてきません。なぜなら、その人に残されたのは底にあるちょっぴりのビールに似たわずかな基本的自尊感情だけだからです。厭世的な無気力や抑うつに支配されており、「今さら努力して何になるのだ」と言いたげです。
こういう人がやる気を出すと、手っ取り早く人に認められ、褒められることばかり目指してしまいます。(いるよね、自助グループにもそういう人)。12の伝統の言う無名性の良いところは、そうした誤った自尊心の回復手段をいさめてくれることです。
逆に、ビールが多く、泡が少ない人は、今の自分に満足しすぎているので、努力できません。進歩がない人です。やはり、一階と二階部分のバランスが取れていることが大切です。
よく学校教育で、できの悪い子供でも「その子の良いところを見つけて褒めてあげる」と良いと言います。これによって伸びるのは二階部分です。もともと学校における情緒教育が社会的自尊感情を延ばすことを目的としているから、当然のことだとされます。
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08月06日(土)
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