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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ステップをやるのに何年必要?
12ステップをやるのにどれぐらいの時間が必要なのか?
それは一概には答えられないことでしょうが、少なくとも「3年も5年もかかるものではない」とは言えそうです。
AAの創始者の一人ドクター・ボブは、生涯で五千人以上のアルコホーリクを治療し12ステップを伝えたとあります(AA p.241)。彼は5日間の入院治療を提供していました。初日はアルコールの解毒で翌日にはステップが始められました。離脱症状が消えるまで待ってなどいませんでした。
ところでビッグブックとは「厚い本」という意味です。初版で厚い紙を使ったため、本全体が厚くなってしまい、こう呼ばれるようになったと伝えられています。ではなぜ厚い紙を使ったのか。お金がなかったので、安い粗悪な厚い紙を使ったという説を信じてきたのですが、真相は意図的に厚い紙を選んだのだそうです。まだ離脱で手が震えるアルコホーリクでもページがめくりやすいように厚い紙を使ったと記録に残っています。(薄い紙はめくりにくいからね)。
前の雑記でドクター・ボブが棚卸し表を本人から聞き取って代筆していたと書きましたが、それは離脱症状で手が激しく震えてペンが握れない人のためでもあったのです。
5日間で12ステップをこなすというのは、こんにち的な基準からすればずいぶんな促成栽培で乱暴な印象を受けます。しかし、当時はこれがスタンダードだったようで、他のAAメンバーが運営していた病棟でも、時代が少しくだってヘイゼルデンの最初のころでも平均入所期間は5日間で、それで12ステップをこなしていたわけです。
しかしさらに時代が下るにつれ、施設の入所期間は延長されていきました。5日間でうまくいく人もいるのでしょうが、皆がそうではなかったのでしょう。
AAが20周年を迎えたときに出版された本「AA成年に達する」で、ビル・Wは「アルコホーリクは急がば回れで行くべきだ」と書いています。たいていのアルコホーリクは最初は酒をやめることしか希望せず、酒以外の自分の短所はなかなか手放そうとしない。アルコホーリクは「何もかもすぐ良くなること」を希望しない。オックスフォード・グループの概念(絶対の純潔・絶対の正直・絶対の無私・絶対の愛)は酒飲みには手に余り、バケツで与えるのではなく、ティースプーンで少しずつ口に運んでやらなくてはならない・・としています。
何のことはない、アル中の回復には時間がかかる、という当たり前のことが再確認されたのでした。
とは言うものの、1年にステップをひとつづつ、というペースではその人の苦しみを長引かせているだけで、それじゃ単なるイジメだと思います。12番目のステップに到達するまで数週間から数ヶ月程度じゃないでしょうか。
それにしても、アル中は「何もかもすぐ良くなること」を望まない、ってのは至言ですね。酒をやめて何年経っても「ここの部分は良くならなくていいです」という保留を抱えこんでいるのがアル中です。
その点では僕も例外ではなく、一生その部分が良くならなくてもオーケーだとは思ってないのですが、「まあ神さま、まだここは置いておきましょうや」という保留はいくらでもありますとも。ただ、その部分が回復しないのは、僕自身が「そこはまだ良くならなくてもオーケー」だと思っているからだという自覚は持っていないといけないよね。回復しないのは回復したくないからなのであって、回復しない責任は自分にあるのですとも。(12&12のステップ6)。
だから「何年経ってもまだ回復しません」なんて言っているヤツを見ると、「そりゃオメーが回復したくないと思っているからだろう」と思わずツッコミを入れたくなっちゃいます。そういうツッコミ入れたいところも僕の回復していないところなのでしょう(回復したくないヤツなんて放っときゃいいわけですから)。だが、そうした欠点をまだまだ手元に置いてかわいがりたいわけですよ。ええ、まったく。
違う話になっちゃいましたね。
05月06日(金)
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