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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■計画停電
この雑記を書いているうちにも、東京電力から発表があるかもしれませんが、計画停電が予定されているようです。
電気は大量貯蔵することができないため、供給量と需要量(負荷量)が常に釣り合っていないとなりません。このため、電力会社では需要量を常にモニターして、各発電所をどれだけ稼働させるか調整しています。原子力の発電所は発電量をなかなか臨機応変に調整できないので、この役割はおもに火力と水力の発電所が担っています。
供給と需要が釣り合わなくなるとどうなるか? 商用電力は交流で供給されています(東京電力は50Hz)。負荷が大きくなる(供給<需要)と、この周波数が下がります。逆に負荷が軽くなる(供給>需要)と周波数が上がります。電力会社ではこの周波数をモニターして、発電量を調整し、せいぜい±0.2Hzの変動に抑えています。
電力消費が最大になるのは真夏の午後です(エアコンを使うため)。特に甲子園で野球が行われている日が多いのだそうです。東京電力ではそれに備えて6,250万キロワットの供給能力を確保しているのだとか。これは自前の発電所のほかに、隣接する中部電力や東北電力から融通してもらう電力も含みます。
地震の影響でこの能力が半分程度に落ちてしまっています。原子力発電所は柏崎は動いていますが、福島の二カ所はニュースで報道されているとおり止まっています。水力発電所に影響はないそうですが、火力は10カ所で停止しています。日曜日は揚水発電所に溜めた水を使って3,700万キロワットを確保するものの、翌日月曜日からは3,100万キロワット程度に低下するとしています。
東電の予想では月曜日以降の電力需要は最大4,100万キロワット。実に1,000万キロワットが不足します。
もし需要が供給を上回るとどうなるか? 前述のように周波数がどんどん下がっていきます。周波数が下がると発電所で発電に使っている蒸気タービンの回転数(通常は3000rpm)が落ちていきます。回転数が落ちてタービンの共振周波数に近づくと・・タービンが壊れて発電所が大災害になってしまいますから、それを防ぐため発電機を止めるしかありません。これによって供給が減るのでますます周波数が落ち、各地の発電所が次々止まり、やがて関東全域が停電する。これが最悪のシナリオです。
これは避けねばなりません。そこで周波数がある程度下がってきたら、送電を途中でカットすることで需給バランスを保ちます。トカゲの尻尾切りのように送電カットされてしまった地域では突然停電することになります。
それは社会トラブルの元になりますから、計画的に停電させることで、全体のバランスを保つ・・というのが今回の話です。具体的には暖房や炊事などで需要が高まる夕方の時間帯を中心に3時間程度、地域ごとに輪番で停電させることになるようです。
他の電力会社から電気を融通してもらうことはできないのか?
震源に近い東北地方は関東以上の大きな被害を受けていて、東北電力は自前の電力も賄えていません。北海道から送ってもらおうにも、途中の送電線が被災しています。
では、西日本はどうか?
明治時代に日本で電気が普及しだした頃、東日本ではドイツから発電機を買ったので50Hzに、西日本ではアメリカから買ったので60Hzになっています。北海道・東北・東京電力は50Hz。中部・関西・中国・四国・九州・沖縄電力は60Hzです。周波数が違うために、この両者の間ではそのまま電力を融通できません。
そこで、長野県と静岡県の三カ所の変電所で周波数変換を行って、西から東へ、逆に東から西への送電を可能にしています。ただ、その能力はせいぜい100万キロワットしかありません。現在関西電力や九州電力から東電に向けて送電が開始されているそうですが、ここがボトルネックになって必要量の1/10しか供給できません。
(だから、東京に電力を送るために関西で節電しよう! というチェーンメールは、善意とはいえあまり意味はありません。西日本全体で100万キロワット捻出すればいいだけなので。ただ節電自体は悪いことではないし、西日本の電力会社も余裕は欲しいはず)
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03月13日(日)
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