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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■精神医療の対象図


この図は12月の京都での発達障害とアディクションに関するシンポジウムで、京都大学の十一元三先生が使われたパワーポイント資料から抜き出したものです。ただ、今回の雑記は十一先生の話とは関係ありません。

精神医療が取り扱う病気を「心」「脳」「体」の三要素に分類しています。

このうち「体」の領域は内科などが診ることなります。

「心」と「体」が重なっている領域にある「心身症」は、ストレス性の胃潰瘍や過敏性大腸炎のように、心理的な問題が原因で体に不調が現れるものです。(心療内科とは本来この領域を担当するもの診療科だったはずなのですが、精神科と同化しているところもあります)。

「体」と「脳」が重なっている領域にある「症候性精神病」は、内臓疾患が原因で起こるものです。例えば肝臓病で代謝機能が落ちると、脳が影響を受けて幻聴が聞こえたり、見えるはずのないものが見えたりします。

「心」の病気として捉えられる範囲は意外と狭いことに気づきます。虐待による愛着障害や適応障害が含まれます。やんごとなき女人の病気は適応障害だと発表されていましたが、どうみてもうつ病ですよね。後述の「脳」の病気よりも、まだ「心」の病気の方が「まだまし」という価値観があるのでしょうか。

残るは「脳」の病気の領域です。ここに含まれる病気の多さを考えると、精神病とは脳という臓器の疾患であることがよく分かります。

統合失調症やうつ病は「内因性」の病気だとされます。内因というのは、素因(遺伝的な体質)と環境(ストレスなど)の組み合わせで発症すると説明され、心因性とも器質性とも区別されています。内因性という概念が考えられたのは、統合失調やうつの人の脳に器質的な変化(マクロな変化)が見あたらなかったからです。

しかし近年の検査技術の進歩によって、内因性の病気でも器質的な問題が大きいことが分かってきています。統合失調症の人の脳に萎縮が見られ、うつ病の人は前頭葉(前頭前野)の血流が低下していることが分かりました。この図で「脳」の病気に含まれているのは、そうした背景があってのことでしょう。

ちなみに、うつ病の人の前頭葉の血流が低下するのは安静時のことだそうです。なにかの作業に集中させると、血流は増加します。前頭葉は長期的記憶や予測、注意力、我慢強さ、創造性や意欲、実行能力を担っています。うつになるとこれらの機能が低下しますが、集中すれば(することができれば)機能が回復します。一方ADHD(注意欠陥多動症)の人の場合、集中しようとするとかえって前頭葉の血流が低下してしまうことが観察されています。とすれば、「がんばろうとすると能力が落ちてしまう」のがADHDの人のジレンマでありましょうか。

話を元に戻すと、発達障害もこの「脳」の領域に含まれます。

また、認知症、アルコールや薬物の依存症、脳梅毒なども、この「脳」の病気(器質性)に含まれます。

このように精神科の扱う病気は多岐にわたります。この図の中で、自分の抱える問題がどこにあたるか、という情報は本人にも周囲にもあまり役立つ情報ではないかもしれません。しかし、一口にメンタルな問題といっても多様であることは知っておく必要があると思い、雑記にまとめてみました。

02月18日(金)
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