ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■関東滞在三日間
金曜日は朝5時の高速バスで横浜のアディクションセミナーへ。
太平洋岸にも雪が降るというあいにくの天気にもかかわらず、会場は熱気で包まれていました。僕が数えた限りでは、参加者の数は400人を超えていたようです(500人という声もあり)。

誰か有名な先生が話すわけではなく、話し手は全員素人(自助グループなどの人)で、しかも有料のイベントです。それでこの人数を集めてしまうところが、このイベントのすごいところです。

久しぶりに顔を合わせる人、新しく知り合った人あり、挨拶をしたり打ち合わせをしたり忙しく、午前中はゆっくり大ホールで話を聞いている余裕はありませんでした。

午後は回復研の分科会の司会を努めました。スピーカーは女性のみ4人。みなさん回復のプログラムに対する真摯な姿勢をお持ちで、安心して聞いていることができました。質疑応答を20分でさばく。赤本・緑本の使い方について問題提起もありました。分科会の参加者は90人ほどだったそうです。

それが終わると大ホールに移動して、回復研メンバーとしてスピーカーを努めました(人材不足なのか?回復研)。順番は最後から二番目。いや、大トリのいっこ前という順番に重みはありません。大ホールでのスピーカーは午前中が主で、午後は分科会が始まるので皆さんそちらへ流れてしまいます。大ホールに残っていられたのは数十人ほどでした。

話を聞いてくださった方から「回復されてるんですね」と言われました。僕が回復しているかどうかよりも、他者の話の中に回復を感じ取れるようになったその人自身の中に回復があるのです。(逆を考えてみよう。「くだらねえ話ばっかりだぜ」と感じている人の中に回復はあるでしょうか)。

「AAメンバーはこういうところに来るとおとなしくなっちゃう人が多いですね」と言っていた人がいました。アル中には環境の変化に対応していくことが苦手な人が多いように感じています。だから、馴染んだAAという文化の中ならのびのびできても、いろんなグループの人が集まる異文化交流の場所に来ると、ちょっと縮こまっちゃうのかもしれません。でも、こうした場所に出てくるメンバーは、変化する環境(つまり社会)の中に出ていこうという前向きな気持ちを持っている人なのだと思います。

翌日は千葉の秋元病院に移動し、アディクション看護学会の研修会に自助グループのメンバーとして招かれて話をしました。「医療の治療構造と、自助グループの治療構造の間に存在する齟齬」について問題提起になる話をしてくれと言われていたので、与えられた10分で僕なり話をしたのですが、実はこの時間はAAの紹介をせねばならなかったのかも。でも、今さらアディクション看護の人たち相手にAAの紹介でもないか。断酒会の会長さんも、断酒会とは何かという話はされてなかったし。
ここでも、最近出来たHA(ひきこもり・アノニマス)がちょっと注目を集めていました。

後半のパネルでは「正直」がトピックになりました。回復には正直さが必要、それはそうなのですが、ここで断酒会の会長さんから

「断酒会員はうそつきばっかりですよ。例会でも正直な話をする人は一人もいません」

とトンデモ発言が飛び出しました。でもこれは慧眼です。断酒会に限らず、AAであれ他のグループであれ、正直な話ができている人などいません。みんな自分に都合の良い話をしているばかりです。

それは昔のことは酔っていたから憶えていない、というわけではなく、アディクションの強迫性によって嫌でも飲み続けざるを得なかったときに、自分を守るために築き上げた自己防衛の仕組みなのです(それがなければ人間は死んでしまうよ)。

けれどこの自己防衛は回復には邪魔です。だから、完全に正直にはなれないけれど、少しでもより正直になりたいという気持ちが、回復に向かうベクトルなのでしょう。そのためには、今の自分は正直ではない、という自覚が必要です。

断酒会の人がこのような意識が持てるのは、なんと言っても家族と一緒に参加する会で、(巻き込まれていても)本人とは違う家族からの視点があるからでしょう。


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02月14日(月)
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