ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■12ステップより発達障害優先
自らも自閉症の子供を持つイギリスの精神科医ローナ・ウィングは、自閉症の基本症状を「3つ組の障害」にまとめました。
・社会性の障害(人との関わりの障害)
・コミュニケーションの障害
・こだわり(現在では想像性の障害)
日本で自閉症というと知的障害を持った人たちを示しますが、「3つ組の障害」は知能については何も語っていません。1980年代に知能の高い自閉症者の存在が認知されると「高機能自閉症」という名前が与えられました。あるいは、元になった概念を発見した人の名前をつけて「アスペルガー症候群」とも呼ばれます。
知能が高い、高機能と言っても、その閾値はIQ70です。IQ70は、なんとか底辺校と呼ばれる高校に入れるレベルだと思ってもらえればいいでしょうか。一方、天才的な知能を持つ人たちもおり、高機能と言っても幅広いことは覚えておく必要があります。
高機能自閉症とアスペルガー症候群の区別については諸説あるようですが、この二つを区別しない方向へ時代は動いているようで、2013年から使われるDSM-Vという診断基準ではアスペルガーとPDDNOSをあわせて「自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorders)」という一つにまとめています。
カナータイプの自閉症には「言葉の発達の遅れ」があるためコミュニケーションが障害を受けるのですが、アスペルガーの場合には言葉に遅れはなく、むしろ書くことは得意だったりします。しかし、コミュニケーションの量ではなく、質的な障害があると言われます。
アスペルガーの抱える問題とは「想像力の問題」と「一般化の困難さ」です。
「標準誤信課題」については、「発達障害について(その6)」で書きました。
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=19200&pg=20100107
別の例を挙げます。子供の目の前でチョコレートの箱に鉛筆を詰めて見せます。箱を閉め、子供に「中に何が入っているかな?」と尋ねると、当然「えんぴつ」という答えが返ってくるでしょう。そこへ外から別の子供(ひいらぎ君)が入っていきます。最初の子供に「いま来たひいらぎ君はこの箱に何が入っていると思うかな?」と尋ねてみます。正解は「チョコレート」ですが、自閉圏の子供は「えんぴつ」と答えてしまいます。
ひいらぎ君の立場に立って考えてみることができれば簡単なのですが、その想像が働きません。箱の中に鉛筆が入っているという「目の前の事実に圧倒的にひきずられ」て全体を見失ってしまいます。
もちろん、この種の問題は学習によって乗り越えることができます。次に同じ課題を与えられたら「えんぴつ」と答えることを憶えればすむことです。アスペルガーの人は記憶力に優れており、この手のパターン学習はお手のものです。これを重ねることで彼らは「人の気持ちが分かるように」なりますが、それは学習の結果であり、想像を働かせる通常人とは質的に違ったものです。
このため、新しいパターンに出会うと、そのたびに誤信の訂正、学習が必要になってきます。一般化することが困難なのです。
あるAAメンバーがミーティングで「ステップ9をやったらこんなに素晴らしいことが起きた」という話をしていました。アスペルガー持ちのスポンシーがそれを聞いて、ステップ9をやれば何もかも素晴らしくなると感じ、早くステップ9がやりたくて仕方なくなってしまったそうです。
そのステップ9をやった人は確かに素晴らしい経験をしたのでしょう。けれど、そこへ到達する前にステップ1〜8で苦労も重ねているし、ミーティングなどでAAにたっぷり時間をかけた結果です。さらには、それが素晴らしい経験であったとしても、それだけでは解決できない様々な問題を人は抱えているものです。
そうしたことが想像できず、ステップ9をやると素晴らしくなるという「目の前の言葉に圧倒的にひきずられ」てしまって、ともかくステップをやれば、何もかも解決する、12ステップ万能だと思ってしまうのです。言葉の裏に、どんな気持ちや行動が隠されているか、想像してみることができません。それが一般化の困難さであり、社会性の障害へとつながっていきます。
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12月16日(木)
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