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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■発達障害と12ステップ
掲示板でのやりとりをご覧になれば、12ステップがある種の問題には効果を示さない(示しにくい)ことが見て取れると思います。

12ステップはconfrontation(直面化)が基盤です。自分がアルコールへのコントロールを失っているという事実に直面することが大事です。直面するからこそ、「アルコールに対して無力である」と認められるわけです。しかし依存症は否認の病気であると言われるように、「不都合な真実」に直面するの避けようとする心理が働きます。たとえば、飲んでいた頃は酷いこともしたが、それは酒に酔ったせいであって、しらふの今は正気である・・という言い訳のように。

さらに先のステップに進むと、自分の中にある恨み(怒り)、恐れ、人に与えた傷に直面していきます。その自省によって自分への洞察が生まれます。さらに先のステップでは人に与えた傷について謝罪や補償する行為を通じて、自分の心の中の汚れをぬぐい去っていきます。内面の変化が行動の変容をもたらします。

しかし、自分が人に与えた傷に対して直面できない人たちがいることに気づかされます。「人を傷つける」というとたいそうな言葉ですから、迷惑をかけるとか、非礼をするという言葉で置き換えても良いでしょう。それは、人を傷つけて平気でいる(罪悪感を持たない)かのように見えるわけです。

ある種の人たちは、自分の言動が非礼であることに気がつけません。そして相手がいきなり怒り出して当惑します。そうした相手を責めるか、自分の何が悪かったのか分からず悩みます。あるいは、相手のちょっとしたひと言やしぐさに囚われ、相手が自分を嫌っているのではと勘違いして、疎外感や孤独感を感じます。(逆に愛していると勘違いするときもある)。言葉の行間や、婉曲表現、場の雰囲気を理解できません。あいまいな概念を把握できず、字句をその字面通りに解釈します。

これは広汎性発達障害の特徴です。このジャンルには、アスペルガー症候群、自閉症(カナー型)、高機能広汎性発達障害、PDDNOSが含まれます。共通するのは想像力と言語の障害です。人の気持ちを理解することが難しく、結果として人を傷つけたことが理解できません。

人を傷つけたことが自覚できない。あるいは、人が別に傷つけてこないのに、恐れを感じ、相手に恨みを持つ。こうした人の行うステップ4・5(棚卸し)の自己洞察は、常人の理解を超えた世界になりがちです。というのも、棚卸しというのはその言葉通りに(商売の棚卸しでも、自分の棚卸しでも)「事実に基づいて行う」必要があるのですが、広汎性の認知の特性によって表に書かれたことと、事実の間に乖離が生じてしまい、望ましい自省に結びつかないのです。

それでもその人なりの掃除が行われれば、心の風通しが良くなって目覚めも経験するようです。だが、その回復の姿は「ひとりよがりの回復」という印象を与えるものになります。

またこれとは別に、認知は正しいのに自己洞察がうまくいかない人たちがいます。
残念ながら、そういうタイプの人たちと深く長くつきあった経験がなく、棚卸し表も拝見したことがないのですが、おそらくは表の中身は事実と大きく乖離してはいないでしょう。ところがそれによって得た自己洞察を長く保持することができないのです。興味関心の対象が移ろいやすく、自己洞察ですらすぐに消えていってしまうのです。

これはADHD(注意欠陥・多動性障害)の特徴です。このタイプの人たちは、同じことで悩み続けることができません。しかししばらくすると同じトラブルを起こして、また同じことで悩んでいます。結果としてこういう人の回復したという主張も「ひとりよがり感」を与えることになります。

どちらのタイプでも、障害がそれほど重くなければ、ステップは「その人の内面には」効果を示す可能性は十分にあると思われます。実際明らかにそう言うタイプの人でも自分が変化したと言う人がいます。しかし内面の変化が、行動の変容へと結びつくとは限りません。なぜなら、障害は残ったままで解消したわけではなく、その障害にステップは効かないからです。また、障害が重ければ、ステップを進めることができなくなる場合もあります。


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11月09日(火)
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