ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■棚卸し表から自分の欠点を見つける
恨みの問題に取り組むために、私たちはその内容を紙に書き出した。(略)なぜ腹を立てているのか自分に尋ねてみた。ほとんどの場合、私たちの自己評価、財布の中身、野心、対人関係(性も含めた)が傷つけられたり、おびやかされているのが原因であることがわかった。それが私たちが心を痛め、激しく怒った原因だった。(p.93)
「12&12」のステップ4によると、私たちには三種類の欲望(本能)があるのだそうです。その一つは自己保存の本能で、食べ物や暖かい住処を手に入れたり、お金(財布の中身)や感情的安定を守る欲望です。もう一つは性に関するもので、恋愛をしたり子孫を作るものです。最後の一つは社会的な欲望であり、自己肯定感(自己評価)を守ったり、人間関係を築いたり、社会的な地位を求めるものです。
この三つの欲望は必要なものです。少なければ少ないほど良いというものではありません。それがなかったら人間は死に絶えてしまうのですから。しかし時にその欲望が行きすぎてしまい、トラブルが起こります。「12&12」のステップ4では、自分の中でこの3つの欲望のバランスが崩れた場合や、他の人の欲望とぶつかり合った場合にどんなことが起こるか、詳しく例を挙げて書かれています。
自分の欲望が満たされない予感があると、人は不安や恐れを抱きます。例えばお金が足りなくなりそうだとか、晩御飯が食べられなくなりそうとか、失恋しそうとか、自分の評判が落ちそうとか・・・。(満たされた状態で不安を持つ人はいない)。そして、恐れがあると、その原因を作った人や世の中の仕組みに対して恨み(怒り)を抱くようになります。恨みがあるからこそ、相手を傷つけようとします。傷つけるとは、つまり相手が欲望を満たす邪魔をするということですから、相手も恐れを持ち、それが恨みにかわり、その恨みによって私たちを傷つけるわけです。
私たちは人の足を踏みつける。相手も踏み返す(p.89)。
自分を動かす仕組みを知ることは、人の心の動きを知ることでもあります。(森田療法の本を読んだところ、この欲望とそのバランスについてほぼ同じことが書かれていて驚きました)。
さて、「アル中の恨みはたいてい逆恨みだ」と言った人がいますが、スポンサーとしてスポンシーの棚卸しを聞いているとまさにそんな印象を受けます。
棚卸し表の第1欄は相手の名前です。第2欄はその人がしたことです。第3欄は、そのせいで自分の何が傷ついたかですが、これはつまり自分のどんな欲望が邪魔されたかです。ここまでは「相手が悪い」という前提で書いてこられます。しかし次の第4欄、自分の欠点は何かということになると、いきなり焦点が相手から自分に移ります。そこにギャップがあり、いきなり自分の欠点と言われても困ってしまうわけです。
(棚卸し表のサンプルは http://kaifukuken.org/arcives/TanaoroshiList.pdf にあります)。
そんなときには、第2欄の相手のしたことについて、「では相手にかわりに何をして欲しかったのか」を考えてみると分かりやすくなります。「私たちが相手に望んでいること」と「実際に相手がしたこと」の違いが私たちを傷つけた(私たちの欲望の邪魔をした)わけです。つまり、私たちは自分の欲望の実現のために、相手に「こうして欲しい」という願いを持っており、相手を期待通りに操れなかったために、失望し、傷つき、相手を恨んでいるわけです。
だから自分の欠点を見るにあたって、自分が相手に「こうして欲しい」と期待していることが、はたして正当なことであるかどうか、を考えます。能力のない人に期待しているのではないか? 相手には相手の希望があることを忘れて無理強いしているのではないか? などなど。
さらに、自分の欲望が過剰なのではないか?という考え方も必要です。三つの本能のうち、自己保存と性については過剰なことが分かりやすいものです(金銭を求めすぎる、とか、安楽を求めすぎるとか)。社会的な本能の過剰さは少々わかりにくい場合もありますが、自分の社会的地位を守ることに固執しすぎるとか、自分の評判を守ることに汲々とする、という図を想像してみるとわかります。
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10月27日(水)
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