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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■キンドリング(その1)
軽度発達障害という概念が浸透していった結果、トゥレット障害(チック症)もこの範疇に入ると考えられるようになってきたようです。(以前は母親の育て方や、家庭の機能不全に原因が求められた時期もあった)。チックはADHD・LD・自閉症としばしば合併します。しかめ面をして顔の筋肉をひくひく動かしてしまったり、「ぼ、ぼ、僕は・・」とどもってしまうのは、確かに本人はとても気になってしまうのですが、、治そうと思って治るものではありません。結局は本人も周囲も「それが個性」だと思って慣れるのが一番いい選択でしょう。

もうひとつ発達障害の範疇と考えられるようになってきたのが「てんかん」です。

僕はAAのラウンドアップで、アルコール性のてんかん発作で倒れる人を見たことがあります。某施設の入所者の人で、ラウンドアップ直前に再飲酒したのだと聞きました。参加中にアルコールが身体から排出され、離脱の症状のひとつとして「てんかん」を起こしたのでしょう。

アルコール性てんかんを起こすのは、元々てんかんを持っていた人に限られるのだそうです。依存症になる前はてんかんを起こしたことがないのに、今は飲むとてんかんを起こす、という人もいます。それは、元々持っていたてんかんの素質が、アルコールで花開いてしまったのでしょう。

大型二種免許を持ち、その資格で稼いでいた人が、アル中になっててんかん発作を起こすようになり、仕事も資格も失ってしまった話がありました。

てんかん発作は、脳内のネットワークが部分的に異常に興奮する(異常発火・てんかん放電)することで起こります。発火の起こった部位によって、表に出てくる症状が変わります。よく「口から泡を吹いて倒れる」と言われますが、そればかりではなく、身体が硬直したり、あるいは身体の一部がヒクヒクと痙攣したり、意識障害になったりします。いきなり相手の意識がぼうっとして、意思の疎通が悪くなったときには「解離(解離性障害)を疑え」といいますが、てんかん発作という可能性もあるわけです。

てんかんの治療には、抗てんかん薬が使われます。その中でも、デパケンやテグレトールはてんかん以外の発達障害にも使われます。同じ薬が奏効するということは、同じメカニズムがある(つまり根っこが同じ)と考えてもよい訳で、てんかんを発達障害に含める一つの根拠にもなっています。

デパケンは非定型うつ病にも処方されます(躁うつ病にも)。元来うつ病は内因性(内分泌系の異常)だとされていました。内因性なのはメランコリー型で、非定型のうつ病は器質性だという人もいます。それが証拠にデパケンみたいなてんかんの薬が効く。そのうち「非定型うつ病も発達障害に含めよう」と言い出す人が出てくるかも知れません。

てんかんは基本的に一度なったら治らないのだそうです。つまり「一度てんかんになったら一生てんかん」なのです。人生のある時期まで発作を起こさなかった人が、何かの刺激(たとえばアルコールの離脱症状)でてんかんを起こすようになると、発作を起こさない身体には戻れません。もちろん、薬で症状を抑えることはできるので、社会的には「治る」と言ってもいいのでしょうけど。

「一度てんかんになったら一生てんかん」というのは、「一度アルコホーリクになったら一生アルコホーリク」(p.49)というのとよく似ています。

いや、似ている以上に、てんかんを起こす仕組みと、アルコールの離脱症状の仕組みは同じだという説があります。それは「なぜアルコールをコントロールできる身体に戻れないのか」も説明してくれるのかも知れません。

・・・というわけで、続きます。

09月03日(金)
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