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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■DSM-5ドラフト
DSM-5のドラフトが公開され、フィールド・トライアルが始まっています。
精神疾患の新しい診断指針が提案される-DSM改訂案
http://news.e-expo.net/world/2010/02/post-116.html
New Diagnostic Guidelines for Mental Illnesses Proposed
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=635867
APA DSM-5
http://www.dsm5.org/
英語なので詳しく読む気になれないのですが、気になったポイントだけ。
厳密で不変だった区分をやめ、複数の疾患にまたがる(共通する?)症状を診断基準に含めることによって「次元的評価(dimensional assessments)」を行うようにする。また重症度を定量化する手段を設けることで、治療が効果を上げているかどうか判断できるようになります。
(例えばアルコールの診断基準で2~3項目当てはまれば軽症、4項目以上だと重症)。
・自閉症、アスペルガー症候群などが一つの「自閉症スペクトラム障害」にまとまる。現在の学習障害(読字障害 dyslexia・計算力障害 dyscalculia)と知的障害・精神遅滞が一つにまとめられて「学習障害(learning disabilities)」となる。
・物質乱用(substance abuse)と物質依存(substance dependence)の区別がなくなり、中毒(addiction)および関連障害という一つにまとめられます。
これによってDSM-IVの「アルコール依存症(Alcohol Dependence)」という病名がなくなり、「アルコール使用障害(Alcohol-Use Disorder)」になります。いずれ日本での病名の変更につながるかもしれません。
さらに生理的依存(身体的依存のことかな?)が形成されている・いない、というカテゴリわけが追加されます。
雑多な断薬症候群(miscellaneous discontinuation syndrome)という項目が新設され、ここには退薬による正常な反応も含む(カフェインの離脱による症状など)とされています。向精神薬の正常な退薬症状もここに入るのかも。
・新たに「行動中毒(behavioral addictions)」という分野が新設されますが、当面含まれるのはギャンブルだけです。セックス中毒とインターネット中毒については付録(appendix)に加えられたのみです。
セックス中毒については、その存在を示す科学的エビデンスがまだ不十分だというのがその根拠で、逆に言うとギャンブルには証拠が揃ったわけです。インターネット中毒については真剣に検討された結果、研究活動を刺激するためにセックスとともに付録に付け加えたとのことです。
・新たに「リスク症候群」というのが加えられ、将来精神病や痴呆になるリスクのある人たちがここにカテゴライズされます。
いわゆるプレってやつ?
・気分障害に「気分不快症を伴う気分調節障害(temper dysregulation with dysphoria、TDD)」が追加。TDDには行動傷害と気分障害が含まれ、むやみに双極性障害(躁うつ病)の診断が増えるのを防ぐねらいがあるそうです。
年末に掲示板を騒がせた自称軽症アル中のおじさんも、ここに入るのでしょう(本人はうつ病だと言っていたけど)。非定型うつ病とか、U型の躁うつ病とされている人たちの中にはTDDに移行する人も多そうです。
・摂食障害(eating disorder)に「むちゃ食い(binge eating)」が追加。
DSM-5は今後フィールド・トライアルの結果が反映され、2013年5月に発行される予定です。
02月24日(水)
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