ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■発達障害について(その14)
Dr.KOBAのブログが閉じてしまって残念です。

アスペルガー症候群の人の起こした殺人事件がニュースで大きく扱われたこともあり、アスペルガーの人に犯罪性向があるという誤解があるようです。もちろん、アスペルガーの人が全体として犯罪に絡むわけではありません。しかし、犯罪を犯してしまう人がいるのも事実です。杉山先生の本では触法行為がある割合は約5%だとされています。

まずひとつは自閉症圏の特性が原因になっているもので、例えば放火の事犯を取り上げると、その動機が恨みやむしゃくしゃしたからではなく、「火をつけたらどうなるか知りたかった」というシングルフォーカスの特性や結果を想像する力の障害から起こってくるものです。
(それが人を傷つける結果になるとは予想できないから)。

もうひとつは、未診断・未治療のまま経過したケースで、いじめや虐待という迫害体験から周囲から孤立し、家族とのあいだにも強い葛藤がある場合です。あるいは、家族が子供の行動を修正する努力を放棄してしまい(要はネグレクト)、不適応が社会的問題として噴出した最初がたまたま犯罪だった、というケースです。

どちらであれ、早期に診断、介入が行われれば防げることで、アスペルガーそのものに犯罪性向があるわけではありません。

併発症について書いておくと、アスペルガーの併発症でもっとも多いのは気分障害(うつ病)です。アスペルガーもうつ病も、セロトニン系の機能不全が関係するところが共通しているので、これは当然かもしれません。
近年、メランコリー型のうつ病(本来のうつ病)以外のうつが増えてきています。そうした非定型のうつ病は器質的な色彩を帯びているという指摘があります。そうした器質的うつ病の背景には、(アスペルガーに限らず)発達障害が存在しているのではないか、と考えればつじつまは合います。

統合失調症も多いのですが、自閉症圏の人が持つ「心が触れあわない印象」は、統合失調の人の持つ「硬い印象」と共通するのかもしれません。実際、アスペルガーとせず統合失調症と診断する精神科医もいるそうです。これにはメリットもあり、高機能発達障害では障害年金がもらえませんが、統合失調ならもらえるのです。

強迫性障害も多く、ひとつは子供の頃の不適応の結果としてなるもの。もうひとつは社会的適応が悪くないグループで、大人になってから周囲に適応しようと努力しすぎて強迫性障害になってしまう人たちです。

不登校も多いのですが、これはいじめがあれば当然かも。解離性障害が多いのも、記憶にフラッシュバックが起きやすい特性と関係あるのでしょう。

意外なのは性同一性障害の多さです。小学生の頃に心の理論を獲得した後で青年期にさしかかると、自分と周りの(同性の)人との違いに気づくようになります。自閉症圏の人は、対象との心理的距離を保てないという特性があります(これが想像力の障害へとつながっている)。自分について他者からの視点を欠いてしまうため、どこが問題なのかわかりません。自分の抱えている違和感の原因を、性的役割に求めてしまうと、男の子が女になりたい、女の子が男になりたいと思うようになります。
(しかしこれは本質的な性同一性障害とは違うような気がします。性転換手術後に自殺する人たちは実はこういう事情があるのかも。あるいはアスペっぽい性同一性障害の人は、実はアスペだけなのかも)。
これを防ぐためには、思春期になるまでには、本人に告知をする必要があるわけです。

考えてみると、性同一性障害も発達障害の一種と言えるのかもしれません(器質的問題だから)。

統合失調にしても、うつ病にしても、はたまた社会不安障害のようなものでも、その病気の標準的な従わない「非定型」があり、しかもそれが往々にして遷延性とか難治例であったりするわけです。そういう例の根底には発達障害があるという話が出ています。例えば(自閉症でなくても)子供の頃に虐待を受けた人が、大人になってうつ症状や不安障害を発症したとして、大人になってからの症状だけに着目して治療しているだけでは、なかなか根治に至らないのもうなずける話です。


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01月28日(木)
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