ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■翻訳企画:AAの回復率(その6)
私たちの未来に何が待っているのでしょうか? それは危機かも知れません。否定的に考えれば、どうやって私たち自身を危機に備えて強くできるでしょうか? 肯定的に考えるのなら、どうやったら、私たちの周りにあふれる酔っ払いともっとコミュニケーションできるでしょうか? 私たち自身良くやったと言ってきましたし、これまでの成功を喜んできました。けれど冷静に考えれば、私たちのソサエティが成し遂げたことは、アルコホリズムという問題全体に小さなひっかき傷をつけたに過ぎません。そのことを無視するわけにはいかないのです。・・・私は思い起こします。・・・AAがあったこの時代、この25年間、世界のアルコホーリクが行列をして私たちの前を通り過ぎ、断崖から落ちていったのです。世界的に見れば、そのような人たちがおよそ2千5百万人いるでしょう。過去25年の間に、絶望と、病いと、不幸と、死の流れの中から、私たちが救い出せたのは100人に1人にすぎません。
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ビル・Wによるこの声明は、2千5百万人がAAにやってきて、そのうち100人に1人しか残らなかったという意味だとしばしば誤解された。華麗な言葉を注意深く読んでみれば、アルコホーリクの行列が「私たちの前を通り過ぎた」と述べられている。彼は「私たちの中を通り過ぎていった」とは述べてはいない。これはアルコホリズムという「世界的な」問題について、アルコホーリクス・アノニマスがアメリカ・カナダ以外ではほとんど知られておらず、またアメリカ国内でも「どこにでもある」という状態からほど遠かったそれまでの25年間についてである。
AAが成功していないと悲観的に見ているわけではない。そうではなく、これはアルコホーリクに手を伸ばせるようにAAが可能な限りどこにでも広がっていく挑戦である。ビル・WはAAがより多くのアルコホーリクに手を伸ばすことを予見し、その可能性からすればAAがこれまで小さな一部しか達成してこなかったと述べている。彼はこれまでの成果は良かったからこそ、より多くの場所で提供される必要があると考えていたのである。
この文脈の中から「100人に1人」だけを抜き出して、それを1%の成功率と呼ぶこともできる。そうではなく、これは奇跡と説明される。25年前にオハイオ州アクロンで二人の男が酒をやめた。その方法が世界中のアルコホーリクの1%を助けたのである。1960年後半、“AA Today”18 という本の中でビル・Wはより曖昧でないかたちでこう述べている。「残りの人たちには、依然として手が届いていません。なぜなら彼らはアルコホーリクス・アノニマスを知らず、また文字通り、彼らの住む場所にAAが届いていないからです。世界中の何百万人ものアルコホーリクが彼ら自身で「AAのことを聞きつけて行ってみる」ことができずにいます」。
18. “AA Today”はAA25周年を祝う1960年の国際コンベンションの記念品。
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これまでの25年の間に、世界中で2,500万人の男女がアルコホリズムに苦しんでいたのは確かなことです。そのほとんどすべてが、今も病み、狂い、また死んでいることでしょう。
AAはこれまでおよそ25万人に回復をもたらしました。残りの人にはまだ手が届いていないか、すでに届かないところに行ってしまいました。次の世代の酔っぱらいたちが今も大量に誕生しています。この問題の大きさに直面して、いったい私たちの誰が満足して座って、こう言えるでしょう。「皆さん、私たちはここにいます。あなたたちが私たちのことを聞いてやって来ることを願っています。そうすれば手助けしてあげられますよ」
もちろん、私たちはそんなことはしません。私たちは広くさらに広く開拓し、考えられるありとあらゆる手段と経路を使って私たちの仲間に手を伸ばそうとしています。・・・奉仕(サービス)するという伝統を受け継ぐ者として、私たちの何人がこう言ったでしょう。「ジョージが12番目のステップに取り組んでいる。彼は他の酔っ払いに関わるのが好きなのだ。だが私は忙しい」 きっと、そんなことを言った人は多くはないはずです。そんな独りよがりになれるはずがありません。
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01月30日(金)
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