ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■しゃべりまくるんだ・・何を?
> 君がまずしなければならないのは、彼らの自信をはがすことだ。医学的な事実を知らせることだ。とことん手加滅せずに。飲まずにはいられなくなる強迫観念について、飲み続けていたら気が狂うか命を落とすことになる肉体的過敏性、または身体的アレルギーについて、しゃべりまくるんだ。一人のアルコホーリクから受け継いだことを次のアルコホーリクに話す。恐らくそうすることで、そういうやっかいな自我(エゴ)が激しく打ち破られていくだろう。そうなって初めて、君の薬を試すことができるんだ。あのオックスフォード・グループから学んだ倫理的な原理をね。(『AA成年に達する』p.102)
最初に「精神の強迫観念と身体のアレルギーについて、新しい人にしゃべりまくる」ことが大切だと言っています。ビルはこのアドバイスに従って、ドクター・ボブに会ったときに、この二つのことを実に6時間に渡ってしゃべりまくったのです。その知識がボブの心を動かし、そうしてAAが始まったのです。もし、ビルがアドバイスを受け付けずに霊的な原理のことばかりしゃべっていたら、AAは始まらなかったに違いありません。
だから私たちは、「絶対に欠かせない」この二つのことをちゃんと理解する必要があります。その上で、新しくAAに来た人や、病院で会った患者さんたちに、このことを「しゃべりまくる」必要があります。そうすることによって、私たちは新しい人たちの回復への「意欲をかき立てる」ことができます。
ではあるものの・・・実はこの二つを伝えても、自分がそれに当てはまると素直に認める人は少数派です。否認の態度でこう言われることのほうが多いでしょう。
「教えてくれてありがとう。でも私はあなたたちとは違うし、私にAAの助けは要りません」
こんな時に、苛立って対決的な直面化技法なんて持ち出さない方が良いです。このふたつの事実がその人にちゃんと伝わっていたなら、いずれ変化が起きるはずです。
> 一人のアルコホーリクの心に、もう一人のアルコホーリクがその病気の本質を植えつけたなら、その人はもう以前と同じではありえない。それ以後、飲むたびにその人はこう考えるだろう。「ひょっとすると、あのAAの連中の言う通りかも」。そしてこういう経験を何回か繰り返し、最悪の状態になる何年も前に、納得して私たちのところに戻って来る。(『12&12』p.33)
精神の強迫観念と身体のアレルギーという「この病気の本質」がその人に伝わっていることが大切です。その人は、酒を飲み過ぎるたびに「これはAAの連中が言っていた身体的アレルギーというやつのせいなのかも」と思うでしょう。さらに、酒を断ったのに再飲酒してしまった時には「これが精神の強迫観念というやつか」と思い至るかもしれません。やがては自分の意志の力で問題を解決できないことを認めるでしょう。そうやって底つきの底を浅くすることができます。
これがAAの伝統的なインタベーション技法だというわけですね。
(AAメンバーとしてではないけれど)先日横浜でステップ1の話をいろんな依存症の20人ほど相手に100分以上させてもらいました。もちろん話をするだけでなく、参加者の人たちが身体のアレルギーと精神の強迫観念について把握できるような工夫も入れ込みました。随時質問を受け付けながらやったのですが、途中である人が「じゃあ、どうやったら解決できるのですか。私はどうすればいいのですか?」と尋ねてきました。
ジョー・マキューの緑本の46ページに書かれているようなことが実際に起きたので、驚いてしまいました。その人は自分の問題を把握し、解決するための意欲を持ったということでしょう。
20人のうち一人だけ? まあそうです。あまりに少ないかもしれませんが、僕にとってはそんな体験は初めてだったのですから。僕が繰り返し取り組んで技量を向上させていけば、打率は上がる可能性はあります。何も全員を納得させる必要はない。野球だって3割打てば名選手なのですから。しかもこいつは遅発性信管みたいなもので、後でその人の中で効果が生まれる仕組みでもあります。
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04月01日(火)
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