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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■脳の機能障害と回復
物に幸せを感じるのは比較的容易でも、人に対して(特に自分の意のままにならぬ人に対して)幸せを感じるのは、難しいことで、経時変化に期待することは出来ません。そして、生きていてもつまらない世界に住んでいる人が、即効性の幸せ薬に手を出すのは時間の問題です。

だから、幸せを感じる能力を鍛えることが必要です。その手段の一つが12ステップというわけです。認知を変えれば、行動が変わり、その人を取り巻く世界も変わります。人を変えるのは難しいし、ましてや世界を変えることはできません。しかし、自分を変えれば世界が変わります。なぜなら、自分の感じ方が変われば、世界は以前とは違って見えるからです。

血流だとか、神経伝達物質とか、受容体というミクロレベルのことが、認知というマクロなことで変わりうるのでしょうか。うつ病に使われる抗うつ剤は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することでうつを解消する働きがあります。しかし、薬を使わない認知行動療法でも、抗うつ剤と同様の結果が出ていることが知られています。つまり、認知の修正というマクロな手段が、脳内のミクロな世界に影響を及ぼしうる、ということです。

酒をやめても回復していないアル中は、即効性の喜びを求めてウロウロします(即効性の喜びは酒には限りませんが)。

それは、何とか練習しないで鉄棒ができるようにならないか、勉強しないで合格できないか、という考え・行動と同種のものです。さらには、努力している他者に対するやっかみも相当強くて、それがますますその人を不快な気分にさせ、一時の慰めがさらに欲しくなります。

飢えた人に魚を与えれば、その日は満ち足りるかもしれません。だが、その人は翌日も魚を要求するでしょう。漁の仕方を教えれば、その人は一生飢えることはありません。でも、漁の仕方は要らないから魚をよこせ、よこさないお前が悪いのだ、と言うのがアル中の脳の機能障害です。

飲まないでいれば経年変化で解消される部分もあるでしょう。しかし、持って生まれた報酬系の働きの弱さは、意識的な努力と行動によって鍛えるしかありません。

10月03日(水)
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