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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAの共同体とは(その4)
セントラルオフィスや評議員の数という切り口で見ると、仕組みを設計した人たちがAAの発展に対して楽観的過ぎたことがわかります。その過大な設計には、「量的拡大こそがAAにとって最善」という考えが伏在しているのは間違いありません。それは「AAの発展は量的拡大による」という考え方です。確かに、グループが増え、メンバーが増えていくことは、より多くのアルコホーリクが助かることですから、それがAAの発展そのものです。

しかし「質」という観点を見落としていたことも間違いありません。量を拡大するためには、質を保ち、質を向上させる努力がなければ、薄まる一方です。

AAを量的に拡大するために、医療や福祉や地域社会にAAの存在や魅力を発信する「広報活動」は熱心に行われています。しかし、AAを「質的に向上」させるための試みはされず、ないがしろにされたまま、結果AAのステップセミナーに行っても、ステップの話はほとんど聞けず、AAプログラムの恩恵を受ける人は増えていません。それではAAが発展したなんて言えません。

では質的向上にはどうすればいいか。この「AAの共同体とは」という一連の雑記のテーマもそこにあります。前回までの雑記で、そもそもAAは、ミーティングをやるための団体ではなく、12ステップをやるための団体だということが見えてきました。質的向上のためには、メンバー一人ひとりがより真剣に12ステップに取り組むこと、それ以上でもそれ以下でもありません。量的拡大と質的向上はバランスが取れていなければなりません。量的拡大への偏りを正す必要があります。

古いメンバーの話を聞くことも大事です。彼らは今の僕らにはない経験を持っています。しかし、古いAAメンバー達の欠点が、今のAAの欠点になっていることも忘れてはいけません。オールドタイマーの話を、ただありがたがって聞いているだけではダメです。彼らは日本のAAの礎を築いた人たちでありますが、同時に、今の日本のAAをこのようにしてしまった人たちでもあります。

先人の業績は、後から来るものによって否定されるものです。これはどの分野でも繰り返されてきたことで、AAもその例外ではありません。僕らが今取り組んでいることも、10年後、20年後には否定されているかもしれません。それで構いません。ともかく、今やらねばならないことをやる。それだけです。

09月05日(水)
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