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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■翻訳企画:AAの回復率(その8)
AAでの回復率が5%あるいはそれ以下という失敗の神話を広めようとしている人たちは、AAの悲惨な(そして歪められた)回復率を主張し、それは特定のタイプのビギナーズ・ミーティングやステップのコレオグラフィー(振り付け)、あるいは口述や筆記による棚卸しのやり方、特定の祈りや黙想の方法や、また聖書を使うこと・・・などなどで、元の水準に戻せると断言している。

このような主張をする復古運動は希望的な想像と推測の産物であり、歴史についての信頼できる調査、情報、実証とは対照をなすものである。データの収拾手法や原因と結果の推定に欠陥があり、それらがどのように引用され、どんな主張を組み立てているかについても無頓着である。

歴史についての分析は、ある程度学術的な体裁を保っているが、綿密な調査が行われる一方で、(資料を)検証する努力は少なく、観察されたデータの精度には疑問が残る。

誰かが悪意を持って人を欺こうとしたとほのめかしたいわけではない。この問題の複雑さを分かりやすく描くとするならば、まず、今日のほどほどの規模のAAグループを対象にして、過去6ヶ月あるいは1年の成功・失敗率を導き出そうとしてみて欲しい。AAの備える構造、(グループの持つ)自律性、またアノニミティ(無名性)が強調されるおかげで、成果の精密なデータを求めることは事実上不可能である。

AAの回復率が惨憺たるものであるという主張に関連して、不正確な言明や「研究が示すところによれば・・・」という引用を行うことで研究による裏付けがあると表現する主張が、ますます頻繁に行われ、広がりつつある。その多くのケースで、おざなりなレベルの議論や、実質を伴わない論文が引用されているに過ぎない。それらの学術論文その他の文献が、題や著者や日付から特定できることはない。

多くの場合、特定の研究への参照を示すこともなく、ただそれが存在するとのみ主張し、実際には存在していない、そんな疑わしい引用を、再引用(孫引き)しているだけである。その結果、AAの失敗率についての間違った主張が、あたかも妥当性を帯びているかのように示され、立証されることなく繰り返されてきた。

また、失敗の主張あるいは推論を実証するわけではない特定の文書が引用されていることもあった。

本論における成功の主張の検証する:

AAの成功あるいは失敗の評価は、それが肯定的な主張であれ、否定的な主張であれ、それに対して決定的に正しさを立証する、あるいは間違いとして論破するために必要なAA内で一貫した記録が保持されていない事情により、困難なものとなっている。AAの(グループの)自律性と無名性を持った構造が、AAグループやメンバー数の履歴の推定すら得ることを難しくしている以上、過去70年を越えるAAの歴史の中での成功あるいは失敗の計測はいずれも精度の低いものとなっている。

ではあるものの、本論でも取り上げた1968年以来のAAメンバー調査は、取得できた信頼性の高い統計情報を元に得られた特徴によって(AAの)平均像を提供してくれるもので、そのサンプル抽出は無作為に行われ、正しい文脈で解釈され、そして最も重要なことは倫理的にかつ正確に解説されていることである。

本論のa), b), c)の各章では、過去3年おきに行われたAAのメンバー調査について、グラフや表やその解析を掲載した。これらによって、調査のデータをどのように解釈すべきが明白に説明できていることを望むばかりである。

要約すると、これらのデータは以下のことを示している:

・AAミーティングに出席して1ヶ月目の人たちは、その26%が1年経過した後にも出席を続けている。

・4ヶ月目にもAAミーティングへの出席を続けている人たち(つまり90日間を越えて留まっている人たち)は、その56%が1年経過した後にも出席を続けている。

・その他の調査においては、最初の年についてやや良い保持率の結果が得られたものもある。

・2004年の調査では、2001年の調査よりも断酒期間が伸びている(この傾向は1983年以降一貫している)。


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02月02日(月)
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