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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■お湯を貯める
10年前、20年前と比べて、間違いなくAAの知名度は上がっています。一般社会への浸透はともかく、アルコール医療関係者や援助職の人でAAの名前を知らない人はまずいないと言ってもいいぐらいです。もちろん、AAの名を知っているからといって、信頼を寄せてくれているとは限らないし、(AAと同じで)職業家の世界にも毎年毎年新しい人が入ってくるので、広報活動は常に続けていかなくちゃなりません。

つまり、AAが成長しない、メンバー数が増えない理由は、広報活動が足りないからじゃないのです。栓が抜けているから。定着率が悪いからです。

もちろん、新しくAAに来た人が全員メンバーとなって定着するなんて考えられません。ビル・Wが書き残した文章によれば、順調にAAが成長を続けていた1940年代ですら、「5人のうち3人か4人は短い間にAAを離れていく」とあります(The American Journal of Psychiatry, 1949 Nov, 370)。AAへの定着率は当時でも2〜4割だったのです。それでも3割ぐらいの定着率だったら凄いことです。

もし日本のAAが3割の定着率を達成していたら、今頃は何万人というメンバーを抱えていたことでしょう。メンバーが増えないのは広報不足だからではなく、ミーティングやAAそのものに「惹きつける魅力」が足りないからです。

(ちなみに、すぐにAAを去って行った6~8割はその後どうなったのか。ビル・Wはビッグブックの第2版の序文で、彼らの「約三分の二は、後になって戻ってきた」と書いています。今の日本のAAで「来なくなってしまった人」がAAに戻ってくる比率はどれぐらいでしょうか? 戻ってこないのは、AAに戻るだけの魅力を感じないからかもしれませんね)

では、どうやったら「魅力」を備えることができるのか。個別に議論するのはまたの機会にするとして、全般的な話をするならば、「新しいこと」をやらなくちゃなりません。今までもAAメンバーはメッセージを運ぶ努力を続けてきました。頑張ってミーティングも維持してきたわけです。しかし、今までのやり方でうまくいかなかったのですから、何かを変えていく必要があります。それはつまり、何らかの「新しいこと」をやるということです。

AAは同調性の強い団体です。新しいことをやろうとすると、すぐに反発が生まれ、「それはAAのやり方じゃない」とか「私が聞いたやり方と違う」という批判が登場してきます。しかし、そうした意見の根拠を聞いてみると、なんだかあやふやなものでしかないことが多いのです。

結局、そうした「新しいこと」への拒否感が、AAの成長を妨げている最大の要因だと思うのです。根拠のあやふやな「述べ伝え」や古い因習に囚われることなく、どんどん新しいチャレンジをやって欲しいと思います。ミーティングのやり方にしても、スポンサーシップにしても、変えてみることが大切です。

もちろん、新しいチャレンジが成功するとは限りません。数限りない失敗が生まれるでしょう。でも、チャレンジなくして成功はありません。特に年齢的にも、ソーバーの期間も短い人たちの「無謀」とも言える挑戦を応援したいと思います。また、AAにおける「ヤング」とは身体的な若さだけでなく、young heartを持った人ならどんな年齢でもヤングなのだと言います。僕も常に変化を求め、AAの中で物議を醸していきたい。

「またあいつが何か変なこと始めたぞ」と言われるのは、とても名誉なことだと思っていますよ。

世の中に存在するすべてのものは、成長を続けているか、朽ちつつあるかのどちらです。何も変えなければ現状維持できるなんて考えは幻想です。ドアを開けて世界を見渡してみればそれが分かるはずです。変化を伴わない回復、変化を伴わない成長はあり得ません。

「変えられるものを変えていく」ための勇気を求めて欲しい・・・てゆーか、お風呂の栓はちゃんとしめようよ。ガス代もったいないから。

11月06日(水)
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