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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAはどれほど有効か
ところで、先ほど、現在の日本のAAの回復率の話をした時に出てきた数字は、分母に「AAミーティングに通うのをやめてしまった人たち」まで含んでいるのじゃないでしょうか。服薬をやめてしまった人たちまで含めてデータを比較したら治験にならなくなります。AAミーティングの有効性の議論をするときも同じでしょう。回復率の計算をするには、ミーティングに来なくなってしまった人たちの数は分母から取り除かないとなりません。
AAをある程度長く続けている人なら、「頻繁に再飲酒を繰り返したけれど、めげずに根気よくAAミーティングに通い続け、最後には安定したソブラエティを達成した人」という少なくとも一人は知っているのじゃないでしょうか。
「AAミーティングに出席を続けている人の中で、酒をやめている人の割合」を計算すれば、どれぐらいの数字になりますかね? その数字が有効性とか、回復率ですよね。
先ほどのビルの上げた数字をもう一度見ると、「AAに加わって真剣に努力して取り組んだ人」という条件が加えられているのに気がつきます。「ほんのちょっとAAミーティングに顔を出して、プログラムが気にくわないと決めつけて来なくなってしまった人」は分母から除かれているのです。
でも、それは数字のマジックでもごまかしでもない、有効性の議論をするなら、それでいいのです。
僕はAAの有効性はちっとも損なわれていないと思います。きちんと評価すれば、今の日本のAAでも75%ぐらいの数字は出るのじゃないでしょうか。
もっとも、有効性の話と服薬コンプライアンスの話は別のものです。服薬コンプライアンスの悪い薬ってのはあるものです。妙に大きくて飲みにくい薬とか、一日に何度も飲まなければならない薬は、コンプライアンスが悪くなります。
その点ではAAも、ミーティング出席コンプライアンス?が改善されるような努力が必要です。「引きつける魅力」がないとなりませんし、会場がたくさんなければ遠くまで通うのが負担になりますし、良いスポンサーがたくさん供給できたほうが良いでしょう。AAの本質を曲げずに改善できるところはたくさんあります。
もちろん、AA側で改善すべきことなのですが、一人のメンバーとして言わせてもらえば、AAの外側でももうすこし努力して欲しいと思います。「AAが良いのは分かりますが、患者さんがAAに行きたがらないんですよ」などと言い訳をぶつくさ言っている医療関係者に出会うと、それをその気にさせるのがあなたの仕事じゃないの? と内心ツッコミを入れたくなる時もままあります。そういう言い訳がましい人は、患者がAAに通い始めると後はAAに丸投げ・・っていう良くないパターンだったりするわけです。
薬を処方するときには、どの薬がこの患者に合うのかって考えて出すわけでしょ。それを考えずにいつも同じ薬ばっかり出して、効果が出なかった時に、患者や薬のせいにしてたら良い医者とは言えません。AAにも合う人合わない人がいるわけですよ。「どんな人がAAに合うか」を考えもせずに、誰でも彼でもAAに送り込もうとするのは良い援助者とは言えません。
ああそれから、ビル・Wは、すぐに来なくなった人の「約三分の二は、後になって戻ってきた」と書いているでしょう。2/3という高い割合かどうか分かりませんが、年単位で観察していれば、かなりの割合の人がAAに戻ってきます。断酒が続いている間はまず戻ってきませんし、死んでしまっても戻ってこないわけですが。たいていは飲み続けた挙げ句に戻ってくるか、ある程度の期間飲まないでいても再飲酒してしまった時がAAに戻るチャンスです。酒がやめられない、あるいは再飲酒というのは、その人にとっては危機に違いありません。しかし、やり方を変えるチャンスでもあるのです。
話がすっかり逸れちゃったので、元に戻してまとめますと、AAの有効性は決して低くありません。高い回復率を達成していると言っても良いでしょう。しかし、その恩恵にあずかるには(薬を飲み続けるように)ミーティングに通い続けるという条件が守られねばなりません。そこに難しさがある。改善すべきところはそこでしょう。
10月07日(月)
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