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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■情報メディアと人間の不安
3月原発事故以降、放射線関係の書籍の売り上げが大幅に伸びました。それはビジネスチャンスでした。ところが、出版関係の人のブログによれば、そのブームも夏には沈静化してしまったそうです。人々の関心の移ろいは早いものです。しかし、来月は事故の一周年にあたります。再びビジネスチャンス到来です。おそらく皆さん商売に精を出されることでしょう。商売はそんなに悪いことではないと思うのです。
ここで「そんなに」悪いことではない、と限定を付けたのは、実は結構悪いことも起きるからです。
いまの日本はモノがあふれており、そんな中で商売をするには、人々の不安を煽るに限ります。つまり、髪の毛が薄くなるのは良くありませんよ、と不安を煽れば、育毛剤やカツラが売れます。インポテンツが良くないと不安を煽ればバイアグラが売れます。結婚できないのは良くないと不安を煽れば、婚活産業が流行ります。ほら、これを手に入れないあなたは不幸です。不幸であることも知らないなんて、可哀想なあなた・・、というメッセージであふれています。原発事故や放射線関係の出版や放送も、この不安を煽るという手法にうまくマッチしています。
解消できない不安は、精神に対しても、肉体に対しても、健康を害することが知られています。「ヤマアラシのジレンマ」のブログの方に二つほどあげておきましたが、実はチェルノブイリの原発事故では、放射性物質による外部被曝・内部被曝による健康被害よりも、放射線による健康被害が強調されるあまり人々が不安に陥った事による被害のほうが深刻だった、という見積もりがあります。
福島の事故ではどうかは後年の検証を待たねばなりませんが、原発事故がもたらした被害より、人々の不安を煽る情報が流布した事による健康被害のほうが大きくなると予測します。というのも、チェルノブイリの時代よりも情報メディアが発達し、人々が不安な情報に触れる機会が増えているからです。(もちろん個々の例でいえば、直接被害のほうが大きい例はたくさんあるでしょうが、全体としての話)。
東京電力は商売の上で健康被害をもたらしたことで激しく非難されています。それは非難されて当然です。しかし、同じく大きく健康被害をもたらしている商売が非難されることはありません。(善意において不安情報を拡大している人たちはどうか)。
パソコンが誕生し、インターネットや携帯電話、FacebookやTwitterとメディアは進歩を続けてきました。しかし、メディアが人間にもたらす混乱は、僕が30年近く前に大学で情報について学んでいた時代とまったく変わっていません。なぜなら、メディアは変わろうとも、人間はちっとも変わっていないからです。おそらく、千年後も(人類が滅亡していなければ)変わらないでしょう。
メディアの問題なのではなく、それに接する人間の側の問題なのです。つまり自分の問題というわけですが、多くの人はそれを自分の問題として捉えていません。
02月09日(木)
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