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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■薬物依存症者のアルコール摂取
逆に、薬物依存症になった人が、薬はやめたもののアルコールに手を出すことはどうでしょうか。何といってもアルコールは合法薬物であり、コンビニで買えるほど入手性良好です。そして、この問題はほとんど啓発されていません。薬物乱用で学校を中退した若者を引き取った大人が、一緒になってがんがん仕事をさせ、一緒にがんがん酒を飲んだりします(そして薬物が再発したり、今度はアル中になったりする)。
薬物依存症者にとってのアルコールの危険性はもっと強調されねばなりません。
NAのパンフレット「だれが、なにを、なぜ、どのように」に、こんな記述があります。
http://www.na.org/?ID=ips-jp-index
> アルコールは薬物ではないという考えは、非常に多くのアディクトを逆戻りに至らしめた。NAに来るまで、多くの人たちはアルコールは別のものだと思っていた。しかし、これはまちがいである。アルコールも薬物なのだ。私たちはアディクションという病気をもつ人間であり、回復のためにはいかなる薬物からも遠ざかっていなければならないのである。
ダルクのような薬物の施設では、施設利用者(つまり薬物依存症者)にアルコールを飲ませないことは徹底しています。しかし、それ以外のところではどうでしょう。覚醒剤依存の息子や娘を持つ親が、アルコールなら良いではないかと酒を飲ませた話はいくらでも聞きます。アディクションの観点ではなく、合法・非合法で判断してしまうミスです。
僕には薬物のスポンシーもいます。僕は彼が薬物だけでなく、アルコールの問題も抱えるまで、彼を手助けすることができませんでした。なぜなら、アルコールと薬は違うと「僕も」思っていたために、彼の飲酒を制止できなかったからです。彼は酒を飲み始めると(時間は長短あるもの)やがて薬も再発するというパターンを繰り返しました。飲酒は薬物再発の前駆症状であり、飲酒した時点で薬物もスリップとするべきでした。今では彼も回復していますが、若い時期の数年間を無駄にしたのには、僕の未熟さにも原因があります。忸怩たる思いがします。
ベンゾジアゼピン系の抗不安剤が依存を形成しやすいことは以前に書きました。しかし、処方薬よりアルコールのほうがより危険な存在です。一つの薬物の依存症になった人は、別の薬物の依存症にもなりやすく、すぐに多剤依存症へと発展してしまいます。一般の人々にとってアルコールはそれほど危険がないにしても、薬物依存症者にとっては再発の対象です。薬物の種類ごとにグループが分かれているのは、「俺はAという薬物の依存症だから、Bという薬物ならオッケーだ」と言わせるためではありません。
「薬物依存症は病気である」、そう捉えるのなら、病気としてアルコールと薬物の共通性に気づいて下さい。決して合法・非合法の問題にすり替えることのないように願いたいものです。どんな薬物を使ってきたのであれ、薬物依存症者がアルコールを飲むのは再発です。処方薬の取り扱いが難しいのは承知しています。なぜなら必要があって処方薬を飲んでいる人がいる以上、ゼロにすることはできないからです。しかし、酒を飲まなくても十分社会生活を送れることは、多くの回復したアル中が実証しています。その点、飲酒の可否について判断に悩む必要はありません。
もう一度ハッキリ言いましょう。どんな薬物を使ってきたのであれ、薬物依存症者がアルコールを飲むのは薬物依存症の再発です。
01月10日(火)
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