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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■どこから手を付けるべきか(その4)
実は自閉圏の人の「こだわり」は、長期に一つのことを対象にするとは限らず、関心の対象が別のことに移ろっていきます。すると、ある時期には飲酒にこだわって飲んだくれていた人が、関心が酒以外に移ろうと、もう酒には見向きもせず、飲みたい欲求すら持たなくなります(そして、また関心が酒に戻る)。こういう人は、時期が来れば簡単に酒をやめますが、再飲酒を防ぐ力は弱いものです。
どうやらアルコール依存症と診断された人の中に、広汎性発達障害の人が混じっているのは間違いなさそうです。その比率がどれくらいなのかは分かりません。また、依存症は(発達障害とはまた別の)器質的問題ですから、飲み始めたのが「こだわり」ゆえだったにせよ、二次障害の自己治療だったにせよ、大量に飲酒を続ければ、やがては依存症を併発する人も少なくないでしょう。その場合、アディクションと発達障害の重複ということになります。
ギャンブル問題の支援をしている人によれば、ギャンブル依存とみなされている人たちに発達障害を持った人が多いのだそうです。広汎性の人は視覚的な刺激を好みます。子供の頃はゲーム機を、大人になってからは液晶画面のついたパチンコやパチスロに「こだわり」を発揮します。アル中はアルコールが入ってさえいれば飲む酒の種類は選びません。同様にギャンブル依存もギャンブルの種類を問いません。しかし、広汎性の人は自分の選んだジャンルにこだわります。こういう人がギャンブル依存症とされてしまうのは、いわば誤診であり、GAや12ステップに導かれてしまうのは悲劇でもあります。むしろ、社会的スキルの習得や、就労支援を必要としているのですから。
広汎性(自閉圏)の事ばかり述べてきましたが、ADHDやLDはどうか。
実のところ、僕は純粋にアダルトADHDという人にお会いしたことがありません。ADHDを自認する人もいますが、広汎性との重複であり、その場合広汎性の問題が優越します。(アディクションそのものがややADHD的であり、ADHDオンリーの人はその中に埋没してしまうのかも知れません)。
LDについても気がつくことがあります。特にAAではミーティングで本を読むことが多いのでディスレクシア(識字障害)は目立ちます。輪読で、単語や行を読み飛ばしてしまったり、同じ行を二度・三度読んだりする人がいます。おそらくご本人は、自分は勉強が苦手だったので頭が悪いと感じてらっしゃるんでしょうが、知的レベルとは関係ないはずです。もちろんすでに社会に適応している人に「あなたLDでは?」とお節介をやくことはしません。
これまで4回に渡って「アディクションとして扱うよりは別のアプローチを」という話をしてきました。統合失調・知的障害・発達障害と続けると、次に人格障害を挙げる人もいます。アメリカの文献を見ると、境界性人格障害(いわゆるボーダー)は大量飲酒を引き起こしやすいとあり、実際そういう事例を相手に大変な思いをしている人の話も聞きます。でも残念なことに(いや残念ではないが)僕の周りにはいないみたいのなので省略させていただきます。(統合失調・知的障害・発達障害とふるいにかけていくと、最後の人格障害にはいくらも残らないのじゃないかという気がします)。
以前に比べてアディクションに対する社会の認知は広がってきました。それはうれしいことですが、その分、大酒を飲んでいれば何でもアルコール依存症、ギャンブルに没頭していればなんでもギャンブル依存症、という安易な診断や決めつけが増えてしまったのも事実です。そうして、自助グループや12ステップの押しつけが行われています。
その人がどんな問題を抱えていて、どんな苦手があって、どんな手助けを必要としているか。その手助けは12ステップやミーティングとは限りません。「見分ける賢さ」を身につけることが求められています。
最近、生活保護を受給しながら酒やギャンブルに耽る人たちを取り上げたニュースが流れていました。これまでの4回を読んでいただいた方ならば、その人たちの問題がアディクションとは限らないことに思い至っていただけることと思います。
10月18日(火)
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