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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ドクター・ボブの言葉の真意
ドクター・ボブはオックスフォード・グループのメンバーでした。またビルの物語に出てくるビルのスポンサー(ビルの友人エビー・T)も、オックスフォード・グループのメンバーでした。もちろんビル・Wも含め、ビッグブックを書いた40人のAAメンバーは全員がこのグループのメンバーでした。AAがオックスフォード・グループから独立するのはその後のことです。

12ステップの中で、ステップ3以降のすべてのステップは、オックスフォード・グループから受け継いだものです。

そしてドクター・ボブはその原理について「手当たり次第に、ありとあらゆるものを読み、それについて知っていると思われるあらゆる人々と話をした」(p.250)とあります。つまり、ドクター・ボブは回復をもたらす霊的原理についてはとても詳しかったわけです。また、彼はオックスフォード・グループのメンバーから、酒の問題を解決するには霊的手段しかないことも提案されていました(つまりステップ2です)。

にもかかわらず、ドクター・ボブは「毎晩酔っぱらっていた」とあります。彼の得た霊的原理には何かが不足していたのです。

欠けていたものとは何か? それはシルクワース博士が発見したアルコホリズム(依存症)の情報、アル中は酒に対してなぜ無力なのかという病気の知識です。つまりステップ1です。彼は医者であるにもかかわらず、自分の病気のことは知識がありませんでした。そして、その知識を得たとき、回復に必要なすべてのピースが揃い、彼は酒をやめることができ、AAが始まったのです。

つまり、ビル・Wがドクター・ボブに運んでいったものは、ステップ1だったのです。2以降のステップに関してはドクター・ボブはすでに知っていたのです。

ということからすると、ドクター・ボブの文章を根拠として言えることは、本からではなく同じアルコホーリクからしか受け取れないのは、12ステップ全体ではなく、ステップ1のみである、ということが正しい。p.253の文章を根拠として、本からステップを受け取った人のステップを本物でないと主張するのは、単なる勉強不足、経験不足の露呈です。

では、本当にステップ1だけは本から受け取ることは無理で、同じアルコホーリクから受け取るしかないのでしょうか。

僕の経験でもステップ1にはAAミーティングで話を聞く経験がとても必要でした。同じ依存症の人から経験を聞き、自分も同じだと思うことが必要だったのです。そういう意味では同じアルコホーリクの経験に触れることはどうしても必要だったと言えます。

しかし、これについてもビル・Wや初期のAAメンバーたちは解答を用意しています。僕の使っているビッグブックは文庫版で、巻末にはドクター・ボブの物語しか載っていません。しかし、分厚いハードカバー版には、同じアルコホーリクの経験談がたくさん載っています。もちろんその経験談は、読んだ人がAAミーティングに参加したのと同じ効果を得るのを狙って収録されているわけです(表紙カバーのビルの文章を参照)。

そして、その狙いはあたりました。そうでなかったら、AAは今のように全世界に広がってはいなかったのですから。ドクター・ボブがビルからステップ1を受け取る必要があったのは、その当時はビッグブックがまだ書かれていなかったからです。

12個のすべてのステップは、ビッグブックという本から受け取ることが可能です。スポンサーではなく、本から受け取ったステップを「本物ではない」と非難されたとしても、その非難は相手の誤解が原因として片づけておけばいいでしょう。

もちろんステップをやったスポンサーが近くにいるのなら、その人に「ステップを渡してくれ」と頼むのが一番楽です。なにもわざわざ苦難の道を選ぶことはありません。しかし、手近に適任者がいないのなら、ビッグブックを読んでそのとおりに実践すれば大丈夫です。その時にあなたに必要なのは、「意欲と、正直さと、開かれた心」(p.268)です。

もし、あなたがビッグブックだけで回復できなかったとするなら、それは意欲が足りなかったか、正直でなかったか、心が偏見に満ちていたかのいずれかです。その場合にはスポンサーに手伝ってもらうしかありません。

11月26日(金)
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