ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■10 years ago (11) 〜 手遅れだと言われても、口笛...
披露宴が終わって、新郎新婦が招待客を見送るという段になりました。皆が一応笑顔を作って歩いていく中で、一人僕のところへやってきて怒った顔を見せた人がいました。それは僕の高校時代からの友人で、一緒に仕事もし、そして仕事でも金銭面でもとても迷惑をかけた相手でした。「お前は一生許さないからな」と彼は言うと、すっと去っていってしまいました。
僕は背中に冷や水をかけられたように、がっくりと気持ちが沈んでしまいました。ああ、このめでたい席で恨みの言葉を言わずにいられないほど、僕が彼にかけた迷惑は大きかったのか。すこしでも埋め合わせ(などという言葉は考えませんでしたが)になればなどと考えた自分の浅はかさを呪いたい気分でした。
式が終わって、着替えをすませて、トイレから出てくると、待っていた人は妻だけでした。
招待客の人々は早々に駅へと向かい、僕と妻のそれぞれの家族は親戚の人とそれぞれの家に向かっていました。待っていてくれる人は、それぞれの伴侶だけでした。結婚式はもっとにぎやかなものだと思っていたのですが、終わってみれば、ぽつんと二人が残っているばかりです。
「二人っきりになっちゃったね」
ホテルのいすに座りながら、お互いにそうつぶやいたのを覚えています。
新居であるアパートの一室に向かい、そこで翌日からの新婚旅行の準備を終えました。
式が終わって数時間経つと、僕の体の中のアルコールは切れ始め、猛烈な飲酒欲求がおそってきました。
「ビールを買いに行きたいんだが」という僕の言葉に、「おめでたい席だけだっていったでしょう」という妻の言葉が冷水をあびせました。
その晩、なかなか眠れないままに、(明日の良好が始まれば、それは非日常、また飲んだって許されるさ。いや絶対に飲んでやる)という気持ちで布団を抱いている僕がいるのでした。
(この項続く)
12月04日(日)
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