ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■モリタ君(6)
モリタ君はよく遅刻をしてきた。
並みの遅刻じゃない。
10時開店の店だったので、みんな遅くとも9時半には店に入っている。
遅刻しても10時には来ている。
ところがモリタ君は違った。
午後1時、2時にノコノコとやってくる。
ひどい時には5時に来たこともある。

その5時に来たときの話だ。
その日の前日、モリタ君は他の部門の人間から飲みごとの誘いを受けていた。
ぼくはそのことをある人から聞いて知っていた。
モリタ君が飲みに行くメンバーは、モリタ君とそう親しいわけではない。
ただモリタ君を酒の肴にしてやろうと思って誘ったのだ。
モリタ君の遅刻の言い訳は「熱が出ましただった。
「熱が出たんなら、別に無理して出てこんでもよかったのに。今頃来ても何も仕事はないよ。帰り!」とぼくは言った。
モリタ君は「熱はもう下がりました。仕事をさせてください」と泣きそうな顔をして勝手に売場に行った。

その日は急遽全員残業になった。
帰りは9時を回りそうだ、ということだった。
ぼくはモリタ君に「熱があって遅れたんやったねぇ。残業せんでもいいよ。今日は早く帰り。明日また遅刻されたら困るけ」と言った。
モリタ君は「しゅ、主任、もう熱は下がりました。残業させて下さい」とまた泣きそうな顔をした。
ぼくは認めなかった。
声をわざと荒げて「さっさと帰れ!」と言った。
モリタ君は不機嫌そうに「はい、わかりました」と言って、みんなが残業している場所には現れなかった。

でもぼくはモリタ君が帰らずに売場にいることはわかっていた。
トイレに行くと言っては、わざと2Fの売場を通って行った。
人影が見えたが、わざと気づかないふりをしていた。
ぼくが30分おきにそれをやったので、今度はトイレの裏の倉庫に隠れた。
たまたまそこを通りかかったやつに、「おい。ここに誰かおらんかったか?」と聞いた。
「いや、誰もいませんでしたよ」とそいつは言った。
ぼくは「ふーん」と言ってその場を去った。

結局残業が終わったのは10時を過ぎていた。
モリタ君は10時までトイレの裏の倉庫に隠れていたことになる。
でも、ぼくが残業を終えて倉庫を覗いた時には、もうモリタ君はいなかった。
ぼくが倉庫を覗くちょっと前に店を出たそうだ。
そして、メンバーと待ち合わせて飲みに行ったということだった。
だが、懲りたのだろう。
その翌日からモリタ君はあまり遅刻をしなくなった。
09月27日(日)
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