ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■いじめっ子
保育園の年少の頃だったが、ぼくはいつも隣の席の男からいじめられていた。
彼は何かあると、すぐにぼくをつねるのだ。
彼はいつも爪を伸ばしていたので、つねられたところから血が出てしまう。
それを見て泣いていた記憶がある。
ただ、いじめられていたのはぼくだけではなかった。
けっこう彼からつねられた者もいたようで、彼は乱暴者として通っていたのだ。
年長になると席替えがあったため、いじめは受けなくなった。
というより、彼自身が大人になったのだろう。
そういうことをしなくなったのだ。
とはいえ、あの時代のことを思い出してしまうので、そいつのそばには近寄らないようにしていた。
その男とは小学校もいっしょだった。
クラスが違っていたためか、あまりいっしょに遊んだ記憶がないのだが、なぜかそいつはぼくに優しかった。
しかし、ぼくの中には、まだ保育園年少時代の記憶が消えてなかった。
そのため、どこか敬遠していた感がある。
中学1年の時、ようやくそいつと同じクラスになった。
家が近かったせいもあり、よくいっしょに遊んだものだった。
ただ、保育園年少時代とは、立場が逆転していた。
とはいうものの、ぼくは別に彼をいじめていたわけではない。
彼をからかって遊んでいたのだ。
2年、3年で、またクラスが別れたため、再び遊ぶことがなくなった。
だが、それは敬遠していたためではない。
ただ、いっしょに遊ばなくなっただけだ。
友好関係は健在で、会えば笑顔の応酬をしていた。
しかし、それも3年の2学期までだった。
3年の2学期に、突然彼は学校に来なくなったのだ。
病気だとかいじめられたとかいう噂が立ったが、実際のところはいまだにわからない。
それからおよそ半年後、高校の入学式の前の日だった。
家の前の公園で友人と遊んでいると、彼が通りを歩いているのが見えた。
元々色白の男だったのだが、その時はさらに白く、なぜか澄んで見えた。
いっしょに遊んでいた友人と「声かけてみようか」と言い合ったのだが、二人ともその顔を見て躊躇してしまい、声をかけそびれてしまった。
それが彼を見た最後だった。
数日後、彼は自殺した。
そのことは先の友人から電話で聞いたのだが、自殺だけでも充分にショックを受けたのに、友人はさらにショックなことを言った。
「あの時、おれたちが声かけんかったけかのう?」
この言葉がぼくの胸に突き刺さった。
もちろんその程度で死ぬわけはないのだが、原因がわかるまでぼくは真剣に悩んだのだった。
本当にいらんことを言ってくれたものだ。
11月19日(日)
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