ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■釣り師オナカ君
昼間、友人のオナカ君から電話がかかってきて、「今から釣りに行くけど、来んか?」と言う。
オナカ君は釣り師であるが、ぼくは釣りはしない。
糸に針を付けたり針に餌を付けたりと、準備が面倒そうだし、何よりも生臭いのが嫌である。
だが釣りを見るのは嫌いではない。
ということで、所用をすませてから、オナカ君が釣りをしている芦屋の柏原漁港へ向かった。

着いてみると、オナカ君は複雑な顔をして糸を垂れていた。
開口一番、「全然釣れん」と言う。
「ここは釣れる場所なんか?」
「前はここでたくさん釣れたんやけど…」
周りには家族連れで釣りにやってきている人もいたが、誰もが浮かぬ顔をしている。
「周りの人も釣れてないみたいやのう」
「おう…」

1時間ほどたっても、まったく釣果がない。
もう夕方である。
周りにいた人は諦めたようで、次々と帰って行った。
それを見てオナカ君も「やっぱりダメやのう…」と言った。
だが、釣り師オナカ君は諦めてはなかった。
「場所変えよう」と言うのだ。
「どこに行くんか?」
「遠賀川の河口堰。あそこはボラが釣れる」
ということで、ぼくたちは遠賀川河口堰に移動した。

なるほど、河口堰は釣れるのだろう。
釣り人の数は、柏原漁港よりも多かった。
川面では魚が飛び跳ねているし、川底にはいくつも魚影が見える。
「ここは釣れるんやのう」
「まあな。でも、あそこにおる人たちは釣れてないと思うぞ」
「えっ、何で?」
「釣り竿見てみ。ルアーやろうが」
と言われても、ぼくはルアーが何なのか知らない。
「竿と関係あるんか?」
「あるよ。ここはルアーじゃ釣れんのよ」

と、釣り師オナカ君がうんちくを語っている時だった。
竿がしなったのだ。
「おい、来たぞ」
オナカ君はゆっくりとリールを回し、引き上げた。
ボラである。
体長は30センチ強というところだった。
ところがオナカ君は「50センチやの」と言う。
さすがに釣り師である。

ボラは狭いバケツの中に、頭から突っ込まれた。
態勢が悪かったのか、何度も何度も体を揺らして向きを変えようとしていた。
ぼくがそれを見ていると、ボラは恨めしそうにぼくの顔を見た。

ちょっと哀れに感じたぼくが「このボラ、まさか今日死ぬとは思ってなかったやろうのう」と言うと、オナカ君は「ボラがそんなこと思うわけないやろ」と言った。
このへんが『詩人しんた』と『釣り師オナカ君』との感性の違いだろう。
10月14日(土)
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