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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■履歴書 その11
ギターについては、今年の1月に詳しく書いているので、ここでは割愛する。

さて、話はさかのぼるが、この年の4月、例の友人が自殺した日のことだった。
ぼくのクラスに、どこかで見たことのある女子生徒がいた。
『どこかで会ったことがあるんだけど、さて、どこで会ったんだろう?』
そんなことを考えながら、その子のことを何気なく見ていた。
結構活発な子だった。
それに目立つ。
と言うより輝いている。
ぼくの中学校にはいなかったタイプの子だった。
しかし、何か懐かしい感じがする。
『確かに以前会ったことがある。さて、どこで会ったんだろう?』
そのことを聞いてみようかとも思った。
が、聞かなかった。
ぼくは女の子と話すことには抵抗を持たないたちなのだが、その時はどういうわけか躊躇してしまったのだ。

『さて、どこで会ったんだろう?』と思いながらバスに乗り、『さて、どこで会ったんだろう』と思いながら家に着いたところで、友だち自殺の通報があったのだ。
その後もことあるたびに『さて、どこで会ったんだろうか?』と考えてみたのだが、その答はでなかった。
しかし、そのことを考えていくうちに、だんだん彼女から心が離れなくなっていった。

ぼくがはっきりその子のことを「好きだ」と思ったのは、その年の11月だった。
ところが、「好き」と自覚した時に、友人からショッキングなことを聞いた。
「しんた、あの子のことどう思う?」
ぼくは、自分の気持ちを隠すのに必死だった。
「うーん、どっちかと言えば、かわいい方やないんかねえ」
「そうやろ」
「それがどうしたん?」
「おれ、あの子とつき合うことにしたっちゃ」
「えっ!? いつ言うたんね?」
「昨日やけど」
「ふーん・・・」
もちろんその時、友人はぼくの落胆に気づかなかっただろう。

ぼくはその頃右手の小指の骨を折り、それまで毎日行っていたクラブをさぼるようになっていた。
そのため学校が終わるとすぐに帰っていたのだが、帰りはいつもその友人といっしょだった。
その話も、帰る時に聞かされたのだ。
ぼくは目の前が真っ暗になった。
友人の前では努めて明るく振る舞ったのだが、一人になった時、そのことがぼくに重くのしかかった。
「もうおれにはギターしかない」
そう思って半ばムキになってギターの練習をした。

それから毎日、友人から「昨日電話したら、話が長くなってねえ」とか「日曜日に二人で映画に行った」などというのろけ話を聞かされたものだった。
ところが、それから1ヶ月ほどして、友人が「しんた、おれあいつと別れた」と言ってきた。
「どうしたん?」
「彼女が『別れよう』と言ってきた」
「何かあったんね?」
「クラブ活動に打ち込みたいらしい」
「別に、クラブは関係ないやろ?」
「いや、彼女は気が散るらしい」
「ふーん」
ぼくは素っ気ない返事をしながら、内心『これでおれにも目が出てきた』と喜んでいた。
しかし、その喜びは、友人の言った次の言葉で砕け散ることになる。
「で、彼女、高校を卒業するまで誰ともつきあわんと、おれに約束した」
「・・・。じゃあ、高校卒業したら、おまえとつきあうということ?」
「いや、そういう意味じゃないけど」

ところが友人の話は意外な方向に展開する。
「ところで、おれ、本当はあいつより好きな人がおるっちゃ」
「えっ!?」
「実は、あの子は二番目に好きな子やったんよね。本命にはなかなか言い出しきらんでね。で、とりあえず、あの子と付き合うことにしたんよ」
ぼくは言葉が出なかった。
ふざけるな、である。
ぼくは彼女と出会って半年の間、あの子のことをどう思っているのかと、自分の心に問いかけてきた。
そして最終的に出た答が、「好き」だったのだ。
ぼくは一途な恋をする人間なので、いつも『二番目に好き』な人など存在しない。
好きな人は一人である。
いつもその人のことしか思ってない。
それなのにこいつは、である。

やけになったぼくは、その後「彼女が欲しい」が口癖になる。

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12月22日(日)
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