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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■履歴書 その9
彼女はぼくに「何でこんなことしよると」とか、「しんた君、変わっとるね」などと声をかけてきた。
ぼくは内心嬉しかったが、「うるさい」などと言って、ブスッとした顔をしていた。
しかし、これはチャンスである。
もしここでやめたら、こんなにカッコ悪いことはない。

10日ほどして、ようやく光が見えてきた。
中を覗いてみると、1メールほど掘り進んでいるのがわかったのだ。
残り1メートルだ。
その時からぼくの気持ちは、『困難だ』から『何とかなる』に変わっていた。
そして2日後、何とかなった。
いつものように棒を突っ込むと、何か硬いものに触れた。
これは何だろうと、棒の先にその硬いものを引っかけて、思いっきり引っ張ってみた。
「ズズッ」という音がした。
1メートルほど長さの黒い固まりが出てきた。
トンネルの中を覗いた。
あちらが見える。
ついに貫通した。

教室に戻ると、みんなが「おめでとう」と言って祝福してくれた。
ぼくがドブさらいをやっていることを知らないと思っていた担任までが、「お、しんた、開通したか」と言っていた。
しかし、その後何が変わったわけではなかった。
ぼくはいつものように、教室で声を張り上げ歌を歌っているだけだった。

12月20日(金)
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