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抱茎亭日乗
by エムサク
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■慶応義塾大学病院,『ヴェローチェ』,新宿区役所,友の失恋
 9月6日のガン検査の結果を聞きに慶應病院。要再検査。
4年前にも1度再検査になって、その後はずっと問題なかった。今度も心配ないと思う。
しかしあの痛い検査をまたやるのか。勘弁してくれ。

今日は超音波診断。ガン検査より楽だが、これだって無痛ではない。
「痛みが酷ければお尻から入れる方法もありますけど、その方が嫌だという人もいます」
「嫌です。頑張ります」

 信濃町から新宿区役所に寄って新橋に行こうと思ったが、時間がなくなって新宿駅で引き返す。えらい遠回りして時間通りに新橋駅。

名原さんと『真理さんへ』の原稿の読み合わせの予定だった。
今回も4、5時間はかかるだろうと思っていたが、「1時間しかない」と名原さん。
「じゃあ出だしとあとがきだけにしますか」と提案。
駐車場や喫茶店を探している間に時間がどんどん過ぎる。

禁煙席がない『ヴェローチェ』の外の席で激論になる。
私が送った原稿はやはり読み込む時間がなかったようで、やり方は今までと変わらないのだが「一足飛びし過ぎ」「この間の読み合わせは無駄だったのか」と言われる。
毎回作業の進め方から話しているけれど、必要なら何度でも説明する。

「疲れる」
「私も疲れます」
「真理さんのためにと思って始めたけど真理さんが『やめる』って言ってくれたら一番楽なのに、って思う」
「私はやめません。絶対自分から『やめる』とは言わない。名原さんがやめたいなら名原さんが決めて下さい」
「ブレーキがかかっている。疑問に感じてる。俺は肩書きではなく人格で人を判断するから」
「私のためにと言ったけど、私の人格にはその価値が無い、判断を誤ったということですよね?」
「そう考える?」
「いえ、質問しているだけです」
「あなたの事を知っている人がいろいろ言って、なるほどなあと思うこともある。ここまで言って良いのかわからないけど」
「どうぞ。私は平気です」
「さっきだってね、『検査はどうだった』って聞いて『どこが悪いの』って聞いても『言いたくありません』て」
「言いたくないんです」
「それじゃあ話が続かないじゃない」
「言いたくない。心配してくれるのはわかるけど、デリケートな問題なので言いたくない」
「そういう風に言ってくれれば」
「聞き方もあるんじゃないですか」
「この仕事にだって影響するかもしれないと思うでしょ」
「それは大丈夫です」
「俺は戦後民主主義が…(略)自由が…(略)。もの書きになりたいならもっと偏りなく物事を見たらと思うよ。そうじゃなきゃ敵を作るし、絶対後悔する」
「私はそういうことは日頃よく考えています。最終的に何が仰りたいのかわかりませんが、私のキャラクターは変わらないし、ぶつかるのは当然です」
「キャラクターは変わらなくていい、俺にぶつからないでくれよ」
「名原さんは今私の人格の話をしているけど、作品の為に意見がぶつかり合うのは避けられません」
「男と女だから?世代の違いか?」
「名原さんと私だからですよ」
「もっと他者感覚を持つべき」
「他人は自分の鏡ですからね」

「余分な話。昨日矢切の渡しとか柴又に行って来たよ」
「面白かったですか?」
「テキヤの人たちが元気で威勢が良かった」
「名原さんがやっててもきっと違和感ないですね」
「冗談じゃねえ。俺はテキヤなんかでえきれえだ」

へ?肩書きで人を判断しないのでは??テキヤは肩書きではないってことか?

こんな雰囲気で終わる。名原さんは「冷静になって考えてみるよ」。

私も新宿区役所に向かう道すがら考える。

私は肩書きで人を判断する人間だ。名原さんの人格どうこうは関係ない。
いい作品、面白い本を作りたいだけ。いや、作品に人格が関係ない訳ないか。
肩書きも人格のうちだと考えるってこと。

私のことをいろいろ言う人がいて、誰が何を言っているのか気になるが、気にしたくはない。
どうせ大事なことなど言ってないんだから。私にとって大事なことなら私に言うはず。
私に言わず名原さんに言ったのだから、それは名原さんにとって大事なことなのだろう。

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09月16日(火)
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