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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ウルフ・オブ・ウォールストリート」


超面白い!怪作にして傑作。三時間が本当にあっという間でした。本年度アカデミー賞、監督・脚本・作品・主演男優・助演男優ノミネート作品。みんなあげちゃって下さい!作品賞で受賞したなら、オスカー会員の皆々様も見上げた気風の良さですが、この下品さではまず無理(笑)。監督はマーティン・スコセッシ。これも実在の人物、ジョーダン・ベルフォートの手記が元の作品です。

1980年のアメリカ・ウォール街。学歴なしコネなしのジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)。何とか一流投資銀行に入職したのに、トレーダーの資格を得たその日がブラック・マンデーと言う運の悪さ。銀行は破綻し、次に入った陳家な証券会社で、あっという間に頭角を現した彼は、26歳で会社を設立。全米1%の富裕層を狙い、巧みな話術を社員に伝授し、今では700人の従業員を抱え、年収49億円。当然不正もてんこ盛り。それを凝視しているFBI捜査官のデナム(カイル・チャンドラー)がいました。

苦労に苦労を重ねて起業するのかと思いきや、割とあっさりジョーダンは出世。考えてみれば、売り買いするもんは株なんだから、他人の褌で相撲取るようなもんですよね。舌先三寸で、あっと言う間の億万長者の描写は、株の本質を描いているのかも?

最初に入った会社の上司(マシュー・マコノヒー、「ダラス・バイヤーズクラブ」出演のため、激やせ中。通常の男ぶりが戻るか、非常に心配)が、とても強い印象を残します。曰くマスターベーションは日に2回、そして薬をやれだって。血液の循環を良くして脳を活性化させるためだとか(笑)。これって、常にハイテンションを維持しなければ、億単位のお金を動かすのが、怖くて出来ないからでは?良心や常識なんか蹴散らさなければ、ウォール街では、やっていけないと言う事でしょう。

なので、仕事しているシーンより多い狂乱の宴が、延々繰り広げられるのですが、妙に納得。一晩に接待260万、ジョーダンの独身サヨナラパーティーに2億円。会社に半裸の娼婦が大挙おでましで、薬物とアルコールの酒池肉林。そして糟糠の平凡の妻は捨て、再婚の妻ナオミ(マーゴット・ロビー)は、ブロンドでグラマラスな「プレイボーイ」風味の美女。だいたい2時間はこれだけ。しかしゲップが出そうかと言うと、さにあらず。超絶に楽しいのです。

男性ならきっと、まるで夢のようだとうっとりするはず。でも正直言うと、私も一万ドルくれるなら、坊主頭にしてもいいわ(笑)。ここまで楽しげに繰り広げられると、お金は無くても豊かな心、充実した人生とか、そんなもん、クソ食らえだと言われている気がする。年食って身の程を知り、日頃は清貧の賢者を目指しているワタクシなんですが(嘘です)、それはもう、お金には縁の無い人生だと、諦めているからなんだと痛感しました。やっぱりお金あった方がいいですよ。すごい真理だと思ったのは、「寄付だって潤沢に出来る」みたいなセリフ。震災の時、それこそ貧者の一灯で寄付したもんですが、今じゃさっぱり。ジョーダンくらいお金があれば、ドーン!と寄付するのになぁと、そんな事も考えたり。

毎日日替わりで薬をキメながら、娼婦を抱くジョーダン。まぁ馴染みの娼婦はいるかもしれないけど、ほとんどが一夜限り。この劇中で愛した女性は二人だけです。そして両方共妻になっている。これは意外でした。最初の妻とは離婚したけど、真面目で的確なアドバイスを夫に出す地味な前妻も、変貌していく夫には、多分付いて行けなくなっていたはず。そしてジョーダンは、あんなお金持ちになっても、常に妻には頭が上がらない。そして社員も大切にする。こういうの、すごく珍しいと思う。だいたいが、暴君になるんじゃないですかね?下衆だけど、決して悪党じゃないんですね。むしろ愛嬌がある。

詐欺まがいの不良債券を売りさばくのに、何故悪党に見えないか?それは買う方だって欲に目が眩んでいるから。年寄りの虎の子を奪うのではなく、富裕層の余ったお金だもん。だから観ていてこちらの胸はちっとも痛まない。所詮ジョーダンたちと顧客は、同じ穴の狢って事ですかね。


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02月11日(火)
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