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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「団地」
藤山直美は、やっぱりすごい、上手い。普通のちょっと暗いおばちゃん役ですよ。それも、ちょっとどんくさい(笑)。それがねぇ、セリフ一つ一つ、所作の一つ一つが味わい深い、面白い。ヒナ子はね、社会的にはどんくさいかも知らんけど、家庭では丁寧でとても誠実な人です。家庭に置いては、愛される人なんですね。だから、家業である薬屋の時は、同じ仕事でも輝いていたと思います。このどんくささ、誰かに似ていると一生懸命考えていたら、「じゃりん子チエ」のヒラメちゃんやわ!と辿り着きましたが、この解説は、余計わからんかな(笑)。
直美以外も、岸部・石橋・大楠諸氏も、皆さん本当に味わい深い演技でした。直美曰く、「それは演技以前に、何回も冬を超え夏を超え、そうやって自分に備わった、そういうもんが演技以前に出たんやないかと。私らもみんな、そんな年になったと言う事ですわ」何と謙虚なお言葉。当日の彼女は、艶やかな黒の着物姿。気さくな物言い、低い物腰。オーラではなく、包み込むような貫録。皮肉ではなく、美を超越した女らしさで、本当に素敵でした。
清治はええ年して「僕」って、奥さんに言うんですよ。奥さんに「僕」と言う旦那さんは、大阪では少ないです。これだけで育ちの良さや優しさが的確に表れる一人称は、他にはないです。そんな清治を、岸部一徳も絶妙に表しています。斉藤工を藤山直美は知らず、「さいとう え」て、誰?状態だったのだとか(笑)。とぼけた演技が上手かったですよ、彼。石橋蓮司も、豪快なようでスケベで小心な善人っぷりが良かったし、大楠道代も、温か味のある演技で、ちょっと格上の大阪のおばちゃんを感じさせて貰いました。
全編笑いとペーソスで、ぐちゃぐちゃです(笑)。「こんなに映画で笑ろたん、久しぶりやで」とは、ロビーで聞こえた会話。同感同感。俗っぽいのに、高尚な気分にもさせてくれる、不思議な作品。真城さんのとある言葉、是非聞いてね。現世を生きる極意です。
06月08日(水)
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