ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928348hit]
■「ハウス・オブ・グッチ」
びっくりしたのは、ジェレット・レト。癖のある役柄を好む彼ですが、特殊メイクを施しての熱演です。凡人で才能がなく、華麗なる一族、取り分け実の父親のアルドから疎まれるパオロ。容姿もパッとしない。やる事なす事薄らバカなのに、哀愁を帯びて絶妙にチャーミングなのです。もうね、大丈夫よと、抱きしめてあげたいのよー。
強欲で下世話で圧の強いアルド。これもまた、パシーノが絶品の成り上がり感で仕上げています。グッチは宮廷職人から出発と言うのは大嘘で、元はアルドの父親が革靴の職人からであると、劇中出てきますが、その俗人ぶりを一番体現していたのが、アルド。余裕の演技で、大層楽しんで演じているのが、判る。マウリツィオの口車に乗せられた息子のパオロのせいで、投獄された彼が、「パパ、ごめんよ」と出迎えたパオロを抱きしめる姿は、親子だわね。出来の悪い息子を捨てきれない姿に、アルドの別の面も感じました。私はこのシーンが、一番好きです。
一族の中で、最後まで気品溢れる様相のロドルフォには、老いても変わらずエレガントな、ジェレミー・アイアンズ。息子には厳格な彼も、亡くなった妻がいつまでも恋しく涙を流す日々です。女々しく映らず、美しく感じるのも彼が演じてこそです(ジェレミーも長く好き)。イタリア系アメリカ人、生粋のアメリカ人のキャストの中、この役を体現するのに、英国紳士のアイアンズを持ってきたのは、正解だと思います。
権力、家柄、財産。当時はやった歌をバックに、愛憎渦巻くドロドロの世界観を、愛情を込めて描いています。私の実家は、グッチとは比べるべきもない小商いでしたが、それでも当時、そこそこ町では知られたお金持ちでした。それが両親が長く壮絶な不仲から離婚。家業はそこから徐々に衰退。跡取りの兄もいたのに、今は跡形もなく、母も亡くなり実家は消滅したのも同然です。対する赤貧洗うが如しで育った夫の実家は、亡き姑の頑張りで家族が団結。今も生家には、義兄夫婦が住んでいます。「家」を存続したければ、家庭円満、その基礎は夫婦仲。これが私の人生哲学ですが、この作品を観て、やっぱり正しかったんだなぁと、感じ入っております、ハイ。
01月23日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る