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うららか雑記帳
by 浜月まお
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■創作・試し書き

お題小説を書くのって、普通の創作とはまた違った面白みがあります。
決められたお題をもとにネタを脳内検索して、短編小説に組み上げる。ただそれだけなんだけど、芯となるキーワードが最初からしっかりと存在しているからか、ぎゅっと濃縮してまとめやすい感じがします。
とはいえネタ選びには時間がかかることが多くて、今回も例に漏れず未だ迷っている最中。
いくつか候補が挙がってるんで、書き散らしてみました。


『昏き理』

(1)三久嶋杏子→13歳くらいの雪(夜想曲)

 裏社会で有用とされる多種多様な技術を、この少女は数年間で驚くほど見事に吸収してきた。
 武器や火薬の取扱いは自由自在。すでに諜報員やシステムクラッシャーとしても一人前に力を揮えるだろう。
 そして暗殺者として仕上がるには、あともう少し。
 ひたむきに知識と技術を求め、地下領域で暗躍するに足る実行者となることを切望する少女。その一途さは引き絞られた弓弦にも似て、鋭く、危うい。見ているこちらが不意に怖気を覚えるほどに。
 ……己の持てる技能すべてを彼女に伝え終えたなら、その時わたしはけじめをつける。もはや途絶えるべきものを後世に引継ぎ、幼い少女の一生涯を暗黒に染めた、その贖いを。


(2)雪の学校生活と暗躍(夜想曲)

「ねーユキ、放課後マック行こうよ。金曜だし、課外授業ないっしょ?」
 のどかな足取りで、定年間際の数学教師が教室から出ていった直後。
 近くの席の友人たちに話を振られて、雪は視線を上に向けて何かを思い出す素振りを見せたあと、いかにも残念そうな声でうめいた。
「ごめん。今日はバイトが入ってるよー」
「そっかぁ、またベビーシッター?」
「残念だな。今度の新メニュー美味しいのに」
 雪に家族がいないことを知っているクラスメイトは、『知り合いの家で子守のバイトをしている』という雪の嘘を素直に信じてくれていて、バイトを口実にすればしつこく誘ってくるようなことはない。
 本当は、任務だった。
 都内の一部地域に急速に出回った『ミドリ』というドラッグの、元締めを探り出す潜入調査。≪桜花≫の別働隊が掴んだ情報をもとに、一般人を装って仲介人と接触し、情報の裏付けを取るのである。
 本来なら調査班の専任者たちが当たる仕事だ。情報収集、調査、囮、破壊、暗殺。ダーティな仕事は数あれど、「肉は肉屋、魚は魚屋」という方針が≪桜花≫には確固として存在しているのだから。
 けれど雪──エーデルワイスだけが例外だった。首領ヒイラギの懐刀として、指令があれば縦横無尽になんでも手がける。いついかなる時も、どんな汚れ仕事でも、ひとかけらの躊躇いもなく。
「また今度誘ってね」
 雪がいつもどおり曖昧な微笑を浮かべると、友達は口々に朗らかな返事をくれる。
 屈託のないその笑顔が、ひどくまぶしかった。


(3)幽鬼との戦い(巫女と鬼神)

 強い執着を抱いたまま死した者は、時に亡霊となって現世に留まる。
 亡霊となり、やがて忌まわしき力をつけて幽鬼へと転化する。
 恨み。未練。後悔。消滅することのなかった強い想いは、死という境界を越えてなお原動力となり、亡者を突き動かすのである。
 命あるものを嫉み、仇なす幽鬼という存在が、政府によって局地災害の一種に指定されて久しい。それと同時に各種整備が進められ、幽鬼を祓って本来あるべき流れの中へと還す特殊な生業──霊術士は、国家資格化されて花形職業となった。
 平安の世から一千年。人は未だ幽鬼に脅かされ、霊術士たちの戦いは絶えることなく続いている。
 亡者を鎮め、場合によっては強制的に清めて、嘆きの輪に囚われたその魂を、天地の摂理の中へ送り出す。
 霊術士の務めとは、つまりそういうものだった。



さーて。どれにしよっかな。


08月06日(水)
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