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うららか雑記帳
by 浜月まお
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■練習
たかひろさんのところで小説上達のための練習法というのが書かれていたので、ざかざかっと即興で挑戦してみました。
提示されたお題ワードを使って文章を書くのです。
お題ワードは『携帯』『ココア』『金城武』。
こんなんできました↓
──… * * * …──
夕飯の後片付けを終えて、志津夫はテレビに視線をやった。
特に目当ての番組があるわけではない。長年の習慣で、手持ち無沙汰になるとついリモコンを手に取ってしまう。
ほとんど無意識のうちに次々とチャンネルを変える志津夫の振る舞いに、昔は妻の恵里子が毎日のように苦情を申し立ててきたものだったが、今ではもうすっかり諦めたのか、こちらを見ようともせず沈黙を保っている。
ふと思いついたふうを装って、志津夫は首だけ妻のほうを向いた。
「紗枝は?」
「お友達と映画ですって」
マグカップになみなみと注がれたココアに息を吹きかけるついでに、恵里子はそっけなく答える。
「高校生がこんな遅くまで出歩くのはよくない」とか「そんな砂糖水みたいなものをよく飲めるな」とか、いくつかの考えが意識野をよぎったけれど、志津夫はあえて何も感じなかったことにした。今この場で口にしても埒が明かない上に、妻の気分を無闇に損ねるだけだからだ。
夫婦の間の沈黙を、薄型テレビが迫真の音と映像とで埋めていく。冬のボーナスで買い換えた新式だが、三人揃って番組を見たことが一体何度あっただろうか。『親子水入らず』は我が家では死語かもしれないな、などとぼんやり思う。
テレビのフレームの中では、彫りの深い俳優が苦悩の演技をしている。精悍な容貌に悲哀の陰が落ちて、志津夫の目から見てもなかなかに惹きつけられる面差しだった。
確かあれは、韓国だか台湾だか、とにかくアジア生まれの……そうだカネシロ、金城武といっただろうか。
独りきりで煩悶した末、テレビの中のその俳優は街へと飛び出した。遠方に行った相棒になんとかして連絡を取ろうと、切羽詰った形相で公衆電話を探している。
まだ携帯電話がそれほど普及していなかった時代の物語なのだろう。その不便さが筋書きを盛り上げ、思わぬ方向へと展開していく。
「ああ、もどかしい! 携帯があればいいのに!
……でもそれじゃ面白みが半減かしら」
いつの間にか妻も見入っていたらしく、湯気は消えているのにマグカップは手付かずのままだった。
「ココア、入れ直してやろうか」
「え? ええ、ありがとう」
これは何というドラマなのか、帰ってきたら紗枝に訊いてみよう。志津夫はゆっくりと立ち上がった。
──… * * * …──
創作メモ。
まず金城武という固有名詞があるので、映画やテレビドラマしか思い浮かばなかったんです。
テレビ→薄型→極彩色&鮮明音声→テレビに夢中→傍らにいる人への気遣いが薄れる→身勝手な行動→夜遊び→若い子
そんな感じで連想していって、こういった仕上がりになりました。なぜ中年夫婦?(笑)
推敲してないので誤字脱字があるかもしれません。
……って、さっそく主体客体のねじれを見つけたよ。見苦しくてすみません。
金城さんのドラマといえば『神様、もう少しだけ』が印象的だったなぁ。もう10年くらい前になるのかな?
女子高生役だった深キョンも、今や際どいセクシー衣装でドロンジョ様を演じるようになりましたよ。実写版なんて怖くて見られそうにないけどさ。
少しずつですが、100のお題に取りかかってます。
No.26『堕ちた聖域』。
No.7『森の木霊』みたいに小ぢんまりとした掌編になりそうな感触です。
最初に浮かんだイメージはPSソフト『ヴァルキリープロファイル』で、廃神殿を舞台に不死者と戦いを繰り広げるレナスの雄姿でした。
このゲームは好きだしけっこうやりこんだけど、二次創作できるかっていうとそれはまた別の話なわけで、あっさりと却下。
『ヴァルキリープロファイル』、グラフィックも音楽も素敵だったなぁ。2作目は未プレイだけども。
06月06日(金)
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