ID:103367
うららか雑記帳
by 浜月まお
[122363hit]
■最初のひとくち ※長文
某web友さんの短編小説を読んでいて、ふと思いました。
小説の書き出しって難しいですよね。
最初の一行をどんなふうに始めるか、悩んでしまう文章書きさんは多いのではないでしょうか。
以下、2003年4月7日付け執筆随録より転載。
──… * * * …──
[最初のひとくち]
新しく小説を購入する時、よさそうかも?と思った小説を買うか否か、皆様はどういう判定基準で決めていますか?
あとがきを読む、というのはよく聞きますよね。折り返しカバーや後ろ表紙に書かれたあらすじをチェックというのも一般的。
それでもいまいち購入に踏み切れない時、私の場合決め手になるのは『書き出しの一文』です。
最初の文に惹かれるか否か。それで購入or却下を決めるのです。
例えば北方謙三『三国志』の書き出しは──“草原が燃えていた。”
山本文緒の『落花流水』──“マリはスポイルされた子供だ。”
司馬遼太郎の『竜馬がゆく』──“「小嬢さまよ」と、源爺ちゃんが、この日のあさ、坂本家の三女の乙女の部屋の前にはいつくばり、芝居もどきの神妙さで申しあげたものだった。”
ですから私にとって、小説の最初の一文は非常に重要なわけです。
そうでなくとも書き出しというのは、その物語の世界へと読者を誘い込む導入部。大事でないはずがありません。
タイトルが小説の『顔』であるならば、書き出しはさしずめ、他者に第一印象を与える小説の『表情』、といったところでしょうか。
ということは、当然小説を書く際にも書き出しには充分気を配らなければなりません。
そこで私は、過去に書いた小説を振り返りました。以下、書き出し部分を幾つかのパターンに分類してご紹介したいと思います。
※『 』は小説のタイトル、“ ”は最初の一文。
@情景描写タイプ
『異端者たちの夜想曲』──“闇が蠢き、影が躍る。”
A状況説明タイプ
『タイトル未定』──“気がつくと、辺りはすでに戦場と化していた。”
B台詞タイプ
『Example1,風御門 理夢』──“「強い人間になりなさい」”
Cモノローグタイプ
『LIO』──“まったくこの娘は、なぜこうも無茶なことを平気でやってのけるのか。”
D昔語りタイプ
『戦士たちの大陸』──“はるかな太古──大陸は、ひとつだったという。”
他にも色々あるでしょうが、とりあえず目についたのはこんなところです。
どんな書き出しが人の関心を惹くのか……それは小説を書くだけでなく普段から読む方なら、きっと経験的にご存知のことと思います。
最初の一文は当たり前の話、1つの小説に1つしか存在しませんから、書き手としては考え抜いた文章を持ってきたいものですね。
もちろん小説は中身全体が大事。ですが今回はあえて書き出し部分に焦点を当ててみました。
小説書きの皆様、あなたの小説の冒頭はどんな書き出しで始まりますか?
これに関してはちょっと個人的に興味があるので、今後の参考も兼ねて、小説を書かれる方にお訊きしたいと思います。
もし協力してもいいよというお方いらっしゃいましたら、小説タイトルと書き出しの一文を列記し、浜月まおまでご連絡くださいませ。
お1人幾つでもOK。マガに返信・私書箱・直メ、どれでも構いませんので、ぜひぜひ教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします〜!
──… * * * …──
書き出しの行だけではありません。
大事なのは最初のワンシーン。これをいかに魅力的に描くか。
読者を物語の世界に引き込み、続きへと誘う力量が、書き手には求められると思うのです。
そう改めて認識して、おもむろに自分の小説に目を向けてみました。
──… * * * …──
▼ 長編小説『WILL』
藍色の闇に包まれた世界──
目覚めたのは、まだ早朝というのにも早すぎる夜明け前だった。
午前4時くらいだろうか。辺りにひっそりと夜気が沈殿しているのを感じながら、アリアは水色の眼を開けた。
「……う〜……」
寝ぼけながらも、ふらふらと身を起こす。
[5]続きを読む
03月08日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る