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うららか雑記帳
by 浜月まお
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■─巡りゆくもの─
今週の土曜日に誕生日を迎える友達がいるので、プレゼントを何にしようか思案中です。
この間とっても素敵な癒しグッズをもらっているし、私も彼女が元気になれるようなものを贈りたいな〜。
今夜あたり探しに行こうっと。
あと、おまけとして、短編小説をひとつつけようとも思っています。
この友達は私が小説を書くなんてことは知らないし、ましてやサイトやらmixiやら、web世界にどっぷり浸かっていることなど全く予想外だろうけど、なんとなく、ね。
知らないわりには、以前私に「ハリー・ポッターみたいな小説を書いてみて」とかご無体なことを言ってたから、案外大丈夫なんじゃないかな?
おまけの小説は、日記に三行ずつ連載していた『三行小説』。ごく短いし、読後感がいいとかで読者様にも好評だったので♪
記念に転載しておきます。
三行小説 ─巡りゆくもの─
☆ … ★ … ☆
「今夜は降るよ」
そう、と答える代わりに僕は目を閉じる。
まぶたの裏に、昼下がりの光がゆるりと染み通っていく。風は澄み、気の早い鶯(うぐいす)が鳴く。
雨の気配はまだない。固く身を閉ざした蕾(つぼみ)も思わず頬を緩めるような、うららかな午後だった。
「……もう行くの?」
伏せられた眼差し。
いつだって僕の答えを知っているのに、君はまた今年も訊く。
繰り返される問い掛け。ほのかに嬉しいのはなぜだろう。君の傍らを通り過ぎるだけの己が身を、こんなにも切なく思っているというのに。
互いに言葉を失い、立ち尽くす。沈黙。窓越しに視線が彷徨った。
「僕は行く」
はっきりと声を出した。半ば以上、自分に言い聞かせるために。
びくりと震えた気配を背後に感じた。
でも振り返れない。いま君の瞳を見てしまったら、きっと僕は……。
振り返る代わりに言葉を贈ろう。抱きしめる代わりに想いを綴ろう。
それが僕の幸せ。
君の隣に居続けることはできない。もう、行かなければ。
僕はそういうものとして定義されているから。巡る運命。来たるべき日が到来すれば、必ず去らねばならぬ定め。
もしも移ろわずにひとつ処に留まれば、僕は僕でなくなってしまう。
君を残して行くことに心配などない。僕が去れば、入れ替わりにあいつが来るから。
本当はもう、すぐそこまで来ているのだ。本当に、すぐそこまで。君も知っているはず。僕が発たないと、あいつが腰を降ろせないって。桜花は固い蕾のまま、陽光は弱々しいまま、吹き荒ぶ風が肌を刺す。そんな季節は、もう終わりを迎えなければならないんだ。
だから。
抗うのは無益なこと。
滞った流れからは悲話しか生まれない。
だから……もう行くよ。
ゆっくり振り返れば案の定、君の寂しげな表情が胸に痛い。
その痛みすら愛しく思えるなんて、きっと僕は途方もない幸せ者。こんなにも、君へと連なるひとつひとつが全て愛おしい。
憂いを帯びた沈黙が、不意に優しいものへと色を変えた。
「また……逢えるよね」
呟く君の声も、限りなく澄んで穏やかだった。返事はしない。
ひっそりと微笑むことで充分に伝わると、僕らは互いに知っている。答えはすでに約束されているのだから。
出逢いと別れ。そして再び巡る出逢い。
来年君のもとを訪れる僕は、もしかしたらこの僕とは違っているかもしれないけど、それでも必ずまた君に逢いにくるから。
僕は一定期間を超えては留まらない。でも再び巡って訪れる。こうして今年もやって来たように。
だから笑って言おう。
「じゃあ……また、ね」
風が舞った。
時は来た。
柔らかな頬にそっと触れると、君は眩しそうに目を細める。
……意識が拡散してしまう一瞬前、その表情を確認できたのが何よりも嬉しかった。
☆ … ★ … ☆
「……行ってしまったのね」
まばゆいものを見る眼差しで、娘は空を見上げた。
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01月15日(月)
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