ID:103367
うららか雑記帳
by 浜月まお
[122370hit]

■未だ我が囲いの中の子どもたち

*創作ノートより抜粋

連作短編小説としてコンテンツ場所だけ確保してある『巫女と鬼神』の一部分です。
以前、執筆随録に載せたことがある部分ですが、気が向いたので再収録。
早くこの子たちのお話も動かしてあげたいなぁ。

──舞台は現代。
日本は世界中を巡る霊的な流れ(竜脈)の楔にあたる特殊な土地なので、人が死した後に魔物と化す場合が多い。ゆえに日本では太古から霊術が発達し、瑠神家に代表される霊術のエキスパート(霊術士)が生まれた。
彼らは魔物と化した魂を鎮める『御魂送り』、あるいは強制昇天させて、迷える死者に天への導歌を紡ぐ。
それらを生業とする瑠神一門の若き宗主・瑠神悠風(るがみ はるか)という少女が主人公です。以下は、霊術士養成の最高峰・御影(みかげ)学園におけるワンシーン。






「毎年恒例、クラス対抗模擬試合だが、うちのクラスからは瑠神、ルーゲンリーフ、黒須(くろす)に出てもらうことになった」

担任教師が告げた次の瞬間、教室中から歓声が沸き上がった。

「最強トリオが揃って出陣かぁ」
「がんばってくれよ!」

皆が当然の人選として彼女を激励している。瑠神悠風が学園随一の才媛であることは周知の事実だし、アヤ・ルーゲンリーフは射撃術、黒須花津美(かつみ)は霊符術に抜きん出ており、学年トップクラスの実力を有しているということを彼らは熟知していた。
クラス対抗試合は単なる学内演習ではない。プロの霊術士をゲストに招いた本格的なものであり、試合内容も正式記録に残る。つまり霊術士を志す者にとっては、キャリアのひとつとなり得る試合なのである。学生同士とはいえ準霊術士も何人かいるし、審議で認められているものなら霊具の使用も可なので、実戦さながらの危険を孕んではいるが、だからこそ実力を証明する絶好の機会でもあるのだ。
悠風にとっては2度目の出場となる。ちなみに、規定により神獣や式鬼は使えない(式神が強力すぎると術者自身の力量がうまく測れないから)。去年は霊符を使ったが、今度は霊刀を中心にしてみよう、と悠風は密かに決めた。

御影学園では、体育科は白兵戦中心、理数科は霊術中心、英語科は各自の特殊能力を伸ばすような履修過程を組んでいるが、普通科ではそれらを組み合わせた総合的なプログラムが施行されている。
模擬試合は学年別、学科別に行われるため、毎年体育科では俊敏な身のこなしと計算された戦術が見られるし、理数科では熾烈な霊術の応酬が、英語科では多彩な特殊能力が披露される。そして普通科は特にレベルが高いと評判で、外部からの観戦者も大勢やって来るほどだった。
悠風はあまり緊張というものを感じない方なのだが、それでも一挙手一投足を見つめられるとやはり居心地が悪くなる。そのプレッシャーを思い出して、悠風は少し気鬱になった。
何にせよ精一杯やるんだ、と自分を励まし、テンション上がりっぱなしの親友たちに笑顔を返した。




「第1試合、A組瑠神悠風対B組刈谷朝美、始め!」

審判が戦闘開始を鋭く告げた。
――学園最大規模の演習室。中はかなり広く、グラウンドと同等の面積があるのだが、観客に霊術の余波が及ばぬようにとの配慮から、選手は結界の張られた領域内で戦うことになっている。選手たちは思い切り力をぶつけ合うことができるというわけだ。
資料によれば、この刈谷朝美は霊符を使うらしい。対する悠風は霊刀。符術は符陣を展開させるのにやや時間を要するものの、発動させてしまえば結構な威力を発揮する。
先手必勝――悠風は涼やかな顔で身構えた。

一般に霊刀と呼ばれるものは3種類ある。

[5]続きを読む

07月02日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る