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うららか雑記帳
by 浜月まお
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■最初のひとくち ※長文
 虫や梟の鳴き声、木々の間を吹きゆく夜風……ただひとつ、白銀の満月だけが、咲き誇る山桜を柔らかに照らしていた。

 目標人物が自室に入ってからすでに数時間が経過している。
 静寂。ほの暗い外灯も消え、完全なる夜の帳が辺りを覆っていた。

 ──“夜刀(やと)”、ミッション発動──

 少女は仲間へ合図を送り、反応があると同時に動き始めた。
 音もなく屋敷へと侵入し、防犯装置を沈黙させ、目指す部屋を探し当てる。
 2人の仲間たちも、それぞれ与えられた仕事を難なくこなしていった。
 作業が進むごとに、少女は次々と指示を出す。即応する仲間。
 任務において、少女と仲間たちは3人でひとつの生き物のように行動するのが常だった。
 頭は少女。仲間の2人は、一丸となって働き少女を助ける手足。頭脳から送られてくる命令を忠実にこなす駒であることを、彼らは己に課していた。それが彼ら2人の担うべき役柄なのだ。
 少女は2人に待機を命じ、館主の寝室へと密やかに入り込む。
 皮手袋を着けた繊手には、不吉に白光りする錐刀。

 そして──

 まるで猫のように無駄のない、しなやかな動きだった。

 部屋に満ちる血臭。
 無言の断末魔。

 一太刀で獲物を仕留めた少女は、もはや事切れた男には一瞥もくれず、仲間たちに撤退の合図を送る。

 暗殺は遂げられた。
 風が吹き抜けたかのような、あっという間の所業だった。
 正確で素早い仕事──それが彼女ら“夜刀”の身上なのである。

 ──“夜刀”。

 闇に紛れ、裁きの斬撃を振るう死刑執行人。
 それが少女たち3人の役割だった。
 そこには涙も慟哭もない。血への嫌悪すら無表情の下に押し隠し、彼女らは冷徹に断罪を実行する。

 4月の冷たい夜風に誘われ、少女の美しい黒髪が躍った。
 辺りには一面の漆黒。山桜の花片だけが、ほのかな月明かりを受けて輝いていた。

 音を立てて吹き過ぎる風。儚く舞い散る桜、桜、桜……。

 少女は仲間を率いて別荘を後にした。
 遠ざかる屋敷は深い沈黙に包み込まれ、そこで起きた惨劇を知る者は誰もいない。

 ──ただ満月だけが、全てを見守っていた。

──… * * * …──

▼ 連作短編『明星』



 気がつくと、すでにそこは戦場と化していた。

 憎悪をはらんだ炎が辺りを覆い尽くし、敵か味方か、どちらのものともつかぬ怒号や悲鳴がこだまする。
つい先日までは居城だった巨大な建築物が、数時間のうちに殺し合いの場へとなり変わり、数え切れないほどの戦士たちが流した血の臭いを──戦争の臭いを充満させていた。
 すでに戦闘の前線は城の最深部へと移っており、城門付近には破壊された城壁と、物言わぬ亡骸だけが残されている。錆びた鉄にも似た異臭は薄まることなく瓦礫の海を漂い、むしろ刻一刻とその濃度を増しているようにも思われた。

 まさに悪夢のような光景──

 その中を、年端もいかない少女がひとり、懸命に走り続けていた。
 剣戟の音、断末魔、苦悶の声……絶え間なく鼓膜を刺激する戦いの轟音。
 烈火にあぶられた夜風に乗って聞こえてくるそれらに半ば錯乱しながら、それでもなお幼い少女は、震える脚で進み続けた。
 平和な世界とは決して相容れない、異質な空気を振り切るかのように。

──… * * * …──

うん。微妙だ。
もっと挑戦心を持って精進しなくては!
技巧面で高望みして、結果を早く出そうとすると、自分の首を絞めることになるって分かってるけど。
緩急のある、小気味良い文章を書けるようになりたいな。
私がこれだけ熱心に打ち込み続けられるのって、本当に小説だけだから。
楽しく、真摯に。初心と向上心を忘れずに。
いつまでも書き続けていきたいな。

03月08日(木)
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