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うららか雑記帳
by 浜月まお
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■未だ我が囲いの中の子どもたち
アヤは別段緊張している様子もなく、優雅な仕草で小ぶりの戦闘杖を構える。相手の小柳は素手。詠唱術を使うのかもしれないので――アヤは何事にも慎重な方だ――、やや距離を置いて対峙する。
「躍れ炎神・導きのままに!」
先手を打ったのは小柳だった。短縮された祈詞。火炎を生む術だ。
「阻め守護者・鉄壁となりて」
アヤは素早く防性霊術の構成を具現化させ、炎を散らす。防御系霊術の方が発動にかかる時間は短い。一撃放った後の隙を突いて、すかさず攻撃に移るアヤ。
「切り替え早いのがアヤの長所だからね」とは、花津美の弁。
『ルーゲンリーフ選手、杖に霊力を込め――あ、弾かれました! どうやら小柳選手、詠唱なしで防御霊術を起動させていたようです!』
いったん退き、体勢を立て直すアヤ。その間も小さく祈詞を呟いていることに、果たして何人が気づいただろうか。
「荒ぶれ風神・我が意のままに!」
「弾け守護者・鉄壁となりて!」
今度はアヤの術が小柳に弾かれた。なかなかテンポの速い試合である。
アヤの武器が杖だから、接近戦に持ち込まれないように警戒しているのだろう。だが本来アヤは中・遠距離戦の方が得意なのである。簡略化した詠唱による術を次々と放ちながら何かを狙っているような素振りだ。
「降り注げ雷霆・束になりて!」
すかさず防性霊術を展開させる小柳。
「防げ守護者・結界となりて!」
しかし彼の防護膜はその役目を果たすことができなかった。アヤの放った雷撃が、防性霊術を打ち破ったのである。どよめく場内。
『今のは……ルーゲンリーフ選手の術が二重構成になっていたように見えましたが』
『ええ。同時に2つの術を使って小柳選手の防御を破ったんですね』
霊術に携わる者――霊術士、準霊術士、修練生――は、術の構成を『視る』ことができる。この、霊的構成を読み取るという能力は、霊術士に不可欠な要素といえるだろう。
無論、小柳とてアヤの術が二重であることに気づき、すでに自分が編み終えた防御霊術の構成では防ぎきれないというのも悟ったのだが、術の強化が間に合わないと見て否応無しにそれを発動した、というわけである。
07月02日(日)
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